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マイ・マザーのrissaのレビュー・感想・評価

マイ・マザー(2009年製作の映画)
4.9
親と子は血の繋がりによって親子となり、家族として見なされる。けれど、人間単体としてみれば、結局親子や家族って、他人の集合体。思想も違えば、嗜好も違えば、生き様も違う。
映画の進行と共に主人公・ユベールとその母の間の亀裂が深まっていく様子やヒステリックになっていく二人の喧嘩は、見苦しいほど強烈な絵。
この映画の主人公は、きっと大人(親)からしたら「子供なところがあるから反抗心が強いのよね」そんな程度に捉えられるかもしれない。だけど私はどうしてもユベールの目線で親子関係を考えてしまう。”I killed my mother” そう言って心の中の母を殺し、それでも「親子」という繋がりからどうしても心が逃れられずに生きるユベールに胸が痛くなる。
同性愛の息子と、その母。この場合は俗に言う、エディプスコンプレックスはどうなるのかな……
本来ならば息子は本能的に異性である母を求め、同性である父を敵対視するはず。だけど、ユベールの場合、恋愛対象は男性。女性的な芸術センスや繊細さも持つ彼の中には、母を徹底的に敵対視する気持ちと、それでも母を心の何処かで愛してしまう気持ち、両方あったんじゃないかな、そんな風に思った。

ドラン作品で初めて観た映画。一気にハマった。この作品においては、勿論音楽や芸術性もセンスを感じるけど、オシャレだから好きってわけじゃない、マジョリティである人の心境、その母子関係の葛藤…、それを手に取るようにリアルな感覚で魅せてくれる才能に感激!
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