レインウォッチャー

X-MEN:ファイナル ディシジョンのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

3.5
サンデイはXデイ③

初期3部作完結編、監督の交代や脚本のリライトなど人事のドタバタがあった様子。しかし、前作までの流れから改善できた点も見られ、結果的には奏功している気がする。

・キャラをチームコンビネーションの中で動かせるようになった
・ミュータントの能力(つまりは人種や性的指向の喩え)は「治すべきもの」なのか?という拡張
・少しムードが軽やかに(ウルヴァリンとストームのキャラ変)
など。

取捨選択の弊害をミスティークやサイクロップスなど一部のキャラクターがあからさまに食らっているのは残念であるものの、前作までずっと解消されなかった「結局この人ってどんな人なの?」が少しずつ見えるような映画にはなったかもしれない。

そして何より、マグ×プロ熟年BL(きっと誘い受け)の集大成としてちゃんと機能している。
袂を分かつ前の共同作業による「作品」であり、二人の娘ともいえる存在、ジーン=フェニックスの奪い合いはほとんど離婚の親権争いのようだ。(ジーンの二重人格設定は本当に必要だったのか?わからないけれど…)

ジーンを手中にしたあとのマグ爺は、威勢はよくとも完全に目的を見失った「喪中」状態である。彼の中ではきっとプロ爺のために戦っている。
調子に乗ってプロ爺をみくびる発言をしたパイロに機嫌を害するマグ爺、「あいつを悪く言っていいのは俺だけ」感がたまらないし、独りでチェス盤を前にしたマグ爺の小さな背中の切なさたるや。

最後までお互いを「プロフェッサーX」「マグニートー」ではなく、あくまで「チャールズ」「エリック」と呼び続けた二人にとって、長い苦しみが一応は決着したといえる『ファイナル・ディシジョン』だったのではないだろうか。

ところで今回のキーとなるキュア(ミュータントの能力を殺す)を一種の去勢と考えた場合、ラストのチェス盤のアレはプロ爺の「ナニ」かを感じ取ったマグ爺の中で「ナニ」かがピクッと、こう、再びピクッと鎌首をもたげる的な、老い木に花咲く的な、一般に起床時に起こるメンテナンス現象的な…

そろそろミッキーマウスにDisney+を追い出されそうなのでやめておきましょうね。お疲れ様でした。