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裏窓のSIのレビュー・感想・評価

裏窓(1954年製作の映画)
5.0
2021.8.16
自宅TVにて鑑賞

足を骨折し家の裏窓から近隣住民を覗くことが趣味となった旅行カメラマンは、向いの部屋で男が妻を殺したのではないかと気付く。将来の話ばかりする彼女、警察の無協力、動かせない身体に苦しみながら、看護師と彼女の決死の協力で主人公たちは証拠を掴み、殺しに来た男を返り討つ。

傑作。これはめちゃくちゃ面白い。
ヒッチコック最大のヒット作。ワンシチュエーションサスペンス。
セットがとんでもなく美しい。いくつかのアパートの部屋たち、それに囲まれた中庭。アパートの間から垣間見える通り、レストラン、遠くの建物からのぼる煙、夕日…。完璧に計算されている。当時パラマウント史上最大のセットで、排水機能すらあったという。凄すぎる。

向いのアパートが事件現場。主人公の男は人々の営みをひたすらみているだけ。まるで観客と舞台のような構造。しかし男に振り向いて欲しい彼女は、そんな境界など気にせず、向いのアパートに突っ込んでいく痛快さ。一方主人公は、彼女が男に見つかり襲われても、それを観ながら「どうすればいいんだ」と頭を抱えるばかり。面白すぎる。
犯罪現場と思しき場所の窃視を続ける動けない自分。行動派の彼女。ヒロインが主人公の言葉を遂に信じてからサスペンスに満ちていて素晴らしい。
展開は王道。

グレースケリーが恐ろしく綺麗で妖艶。ヒッチコックのキラーカットと相まってすさまじい破壊力。
登場から官能的すぎる。夕暮れ時、うたた寝の男視点のカメラに誘惑的な顔のアップ、からの異常に顔を近づけキスするように囁く。
「足はどう?お腹は?最近、ラブ・ライフはどう?」
主人公が名前を問うと、3つの薄明りのシェードランプを舞うようにつけながら、自分の名前をリズミカルに口にする。「リサ・キャロル・フレモント」
車椅子に座る主人公をアップに、そのままカメラに収めながらベッドに横たわるグレースケリーを足から映し2人を収めるカットも、忘れられない。こんな良い画を撮る印象はなかった。
主人公役のジェームズスチュアートも、座っているだけなのに飽きさせず上手い。痒いところを掻いて気持ちよさそうにする表情がなんとも良かった。

良すぎました。また観ます。
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