SANKOU

裏窓のSANKOUのレビュー・感想・評価

裏窓(1954年製作の映画)
4.4
優れた傑作は冒頭からそれだと思わせる何かを持っているが、この作品も怪我をして脚にギプスを巻いた男、窓から見えるアパートの住人のそれぞれの生活、とびっきり美人のヒロインと、わくわくさせるような要素がふんだんに散りばめられている。サスペンスとしても一級だが、コミカルな人間模様も秀逸で、ジェフが窓から覗く向かいのアパートには作曲家の男、バレリーナ、子犬と暮らすベランダに布団を敷いて寝る夫婦、独り身の寂しい女が住んでおり、彼らの生活がこの作品に彩りを加えている。独り身の女が親しい男を食事に招待している体で、独りでグラスにワインを注いでいる姿を見て、ジェフが白ワインの入ったグラスを傾けて乾杯するシーンが心に残った。あるきっかけから向かいのアパートに住むセールスマンが、寝たきりの女房を殺害した疑いをジェフが抱いてからの展開はなかなかにスリリング、克つコミカルで見応えがある。最初は耳を貸さなかった家政婦や、恋人のリザがいつの間にか俄然やる気になってジェフの推理に手を貸すのが面白い。脚を怪我して動けないという制約のある中でのジェフが犯人を次第に追い詰めていく、という設定が本当に秀逸。そしてリザ役のグレース・ケリーの美しさに目を奪われる。ちょっとしたアパートの住人の仕草にまで演出が行き届いていて、ヒッチコック作品の中でもトップクラスの面白さだと思った。
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