emily

モーリスのemilyのレビュー・感想・評価

モーリス(1987年製作の映画)
3.9
20世紀初頭のイギリス、同性愛は犯罪とされた時代。ケンブリッジ大学に進学したモーリスは上流階級のクライヴに出会い、恋に落ちる。プラトニックな関係ではあったが、同性愛に目覚め、大学を卒業した後も二人は交流を続けていたが、クライヴは母親の勧めで結婚し、モーリスとの関係を清算する。一方モーリスはクライヴ家の狩場番の青年アレックスと恋に落ち・・・

 時代をと階級を感じさせる歴史のある建造物、豪邸の美しさ、薄暗い色彩が陰影を作り出し、高貴漂う品の良さを全編から感じさせる。モーリスとクライヴの間には同性である壁だけでなく、階級の違いも大きく立ちはだかる。しかしクライヴはそれでも友人として彼の世界にしっかりモーリスを迎え入れ、結婚後もなお近くに置き二人は友情関係を育んでいく。年月の流れを二人の心情の変化、身の回りの変化と交えながら、ピュアな恋心を隙間隙間でしっかり感じさせる。大学時代と同じにはいかない。何かを得るには何かを捨てなくてはならない。決してクライヴが残酷だった訳ではなく、優先順位と貴族ならではの義務がそうさせた訳で、モーリス自身が取った最後の行動がさらに二人の埋まらない溝を浮き彫りにさせる。

 美しく壮大な自然と、全編に漂う格式高い品の良さが、二人の関係の切なさを浮き彫りにし、決して交わらない現実ゆえプラトニックな二人の関係こそ真実の愛のように思える。心の中でずっと生き続ける人、お互いにとってもそうゆう存在であろう。
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