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モーリスのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

モーリス(1987年製作の映画)
4.1
まだ地震の恐怖から抜け出せたわけではないですが、今日は映画を観に行けて良かったです。
当たり前の日常の大切さを身に染みて感じています。

30年前に公開されましたが、今回4Kデジタルリマスター版で復活!
この作品、確か高校生くらいの時にレンタルで借りて見たんです。
その時はですね、同性愛についての知識も意識もなく、自分からは遠いものであったし、この作品への興味も、美しいイギリス貴公子を拝む目的だったのかもしれません。

なので、ストーリーも全然覚えてなくて、今回初見のような新鮮さで見ましたし、あろうことか、主人公のモーリスはヒュー・グラントだと思ってましたんですね。
ほんとにいい加減な記憶です。
ただただ貴公子を愛でてただけだったんでしょうな…。

でも、当時この作品を見て、同性同士の恋愛も美しいものだと、恋をする気持ちは異性へのそれと同じなんだと思いました。

ケンブリッジ大学で知り合ったモーリスとクライヴは互いに惹かれ合うようになるのですが、20世紀初頭のその時代は、同性愛は汚れた犯罪であったので、思いは通じ合ってるのに結ばれずに、卒業した後も、上流階級の家柄で弁護士という地位もあり、ゲイであることが知られたら、逮捕された上に何もかもを失うことになるので、どんなに愛し合っていても一緒にはなれない苦しみや葛藤が描かれています。

クライヴはモーリスの事を思いながらも女性と結婚してしまい、モーリスはどうしても叶わない思いに傷つき引き裂かれ、自分のセクシャリティに悩んで「病気」を治そうとしたり、同性愛者ゆえの苦悩が伝わってきます。

後半は、モーリスとは身分の違う猟番のアレックとの関係が描かれていますが、同性愛だけでなく身分の違いも高い壁として2人の前に立ちはだかり、愛し合っているのに社会的に許されない悲しみや理不尽さがとても切ない。

社会的な死を覚悟で全てを投げ打って愛に身を委ねるのか、クライヴのように愛を捨てて生活や地位の安泰を取るのか、そのどちらかしか選択肢がなく、どちらにしても失うものがあまりにも大きいのです。

しかし、「ブロークバック・マウンテン」のような悲しい結末ではなく、とても美しいラストと、結婚してもやはりモーリスへの思いを胸の中にしまっているクライヴの描き方も良かったです。

30年も前に、これだけ同性愛者の心や社会の閉鎖性などの問題に向き合って描いているということに驚きます。
ジェームズ・アイヴォリー監督といえば、「君の名前で僕を呼んで」の脚本も手がけて久しぶりに名前を聞きましたが、美しい映像やストーリーともにとても良い作品だったと思います。

そして、当時イギリス貴公子ブームが巻き起こったのも納得の、ヒュー・グラントの麗しさ!
ルパート・クレイヴスとともに、まるで少女漫画から抜け出したようなイケメンぶりですよ。
そう言えば当時、ヒュー様かルパートかどちらが良いか悩んだ記憶が…。
麗しい殿方を愛でることも出来る眼福映画です。

54
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