けーな

モーリスのけーなのレビュー・感想・評価

モーリス(1987年製作の映画)
3.7
同性愛の作品は、あまり得意ではないのだが、今作では、主人公の苦悩する姿がとても切なく、胸を打つ作品だった。

同性愛が罪だと見なされていた20世紀初頭のイギリスが舞台となっている。ストーリー以外にも、当時の上流階級の暮らしぶりや、ケンブリッジ大の学生達の様子を見ることができて、嬉しい。

タイトルの「モーリス」とは、主人公の名前。モーリスの苦悩する姿をジェームズ・ウィルビーが見事に演じている。相手役は、若きヒュー・グラント。とても美しかった。さらに、重要な役目の、猟場番を演じたルパート・グレイブスが、とても巧い。妖しい魅力が伝わってきた。また、労働者階級の話し方をして、上流者階級のモーリスと対比させている点も見事だった。

監督のジェームズ・アイヴォリーは、英文学作品を監督することが多い。今作は、「眺めのいい部屋」「ハワーズ・エンド」と同じく、E.M.フォースターが原作。ちなみに、ジェームズ・アイヴォリーも、E.M.フォースターも、同性愛者である。

今作は、「眺めのいい部屋」の翌年に製作されたが、「眺めのいい部屋」で主役だったヘレナ・ボナム=カーターが、今作で、ちょこっと出演しているのに、最初、気づかなかった。(クリケットの試合のシーン)

今作で、モーリスの2番目の相手役アレックを演じるルパート・グレイブスは、「眺めのいい部屋」で、ヘレナ・ボナム=カーターの弟役を演じていたが、その時は、溌剌とした明るい青年を演じていたので、当然、今回と雰囲気が違ったので、驚いた。

今では、すっかりラブコメの帝王となっているヒュー・グラントだが、今作が、ほぼデビュー作で、美しくも苦悩する役柄を演じていて、見事だった。ラストの表情が必見。
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