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シシリアンのHKのレビュー・感想・評価

シシリアン(1969年製作の映画)
4.0
アラン・ドロン追悼3本目。本作は昔TVの洋画劇場で何度も観ました。
ジャン・ギャバン、アラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラの仏三大スター共演作。
原題は仏語で“ Le Clan des Siciliens”ですが、今回観たDVDは英語版で“The Sicilian Clan”。
“Clan”は一族とか一家の意味、パリ在住のシシリアン・マフィア一家の大仕事の顛末が描かれます。

監督のアンリ・ヴェルヌイユはギャバンとは『ヘッドライト』『冬の猿』『地下室のメロディー』、ドロンとは同じく『地下室のメロディ』、ヴァンチュラとは『太陽の下の10万ドル』で過去に組んだ仲。
さらに、ギャバンはヴァンチュラとは『現金に手を出すな』、ドロンとは『地下室のメロディ』で共演済み、ドロンとヴァンチュラは『学生たちの道』『冒険者たち』で共演済みですから、気心の知れたメンバーといったところでしょうか。

ドロン(当時34歳)は今回も一匹狼の殺し屋で一番血の気も多くむしろ悪役に近い役回り。
一族ではないドロンを信用できない一家のドンを演じるギャバン(当時65歳)は終始苦虫を噛み潰したような顔ですが、40年ぶりに空港で待ち合わせた旧友にお互い気づかず、しばらくしてやっと気づいたときの唯一の笑顔がチャーミング。「昔と変わってないだと!(笑)」。こんなシーンをいいと思うのは自分も歳をとったからでしょうね。

でもやはり一番美味しい役どころはドロンを追う警部役でいつもタバコを咥えていながら禁煙中のヴァンチュラ(当時50歳)。デビュー時に俳優を続けるよう助言を受けた恩人ギャバンとのツー・ショットも渋い味わい。
それと、終盤に出てくる組織の雇われパイロットは、シドニー・チャップリン(あのチャップリンの長男でジュラルディンの兄。ベルモンドの『オー!』にも出てましたね)。

今どきの速いテンポと派手なバイオレンスに慣れてると物足りない人もいるでしょうが、三人の渋い演技もさることながら、撮影のアンリ・ドカエ(『太陽がいっぱい』『サムライ』『仁義』)、音楽のエンニオ・モリコーネがこの時代ならではのノワールをたっぷり盛り上げます。
とくに私は本作の曲が大好きで、たしかマカロニ以外で最初に知ったモリコーネの曲。
『夕陽のガンマン』などでもお馴染みのアレッサンドロ・アレッサンドローニの口笛に、あのビヨ~ンという音を出す楽器、たたみ掛ける繰り返しの旋律がたまりません。

昔のTV吹替あるあるで、思っていたのと違うの字幕セリフがけっこうあり。
ラストの会話は私としてはやっぱり当時のTV吹替の、
「まだ新しいコートなのに・・・」
「もったいないことをしました」
・・・が渋くて一番しっくり来るんですけどね。
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