海

アリスの海のレビュー・感想・評価

アリス(1988年製作の映画)
4.9
兎の歯。アリスの手の甲。涙の海。ねずみのご飯。骨馬車、剥製。時計にバター。クッキーにインキにおがくず。
ただただすごい。ありえないほどすごい。不気味で残酷なのに、可愛くって信じられないほどチャーミング。
不思議って、裏切り。信じたくないけど、わたしたち誰でも、自分の中に、こんなに残酷で美しい想像を持っているのかもしれないね。

アリスの人形やクッキーやコップや、三月兎や帽子屋さん、懐中時計、小物が細かくぜんぶ可愛くて魅力的。たまらない。
でも何よりすごいって思ったのが、音だった。白ウサギの歯のかちかち鳴る音、おがくずの零れる音、骨の当たる音、、、観た後、音楽もなく静かな映画、って感じるひとも居るだろうし、こういう音をうるさくっていうよりは、聴かずには居られなかったひともたくさん居るんじゃないかな。
映像はもちろん素晴らしかったけど、わたしは音に誘われて、アリスの世界を覗きに行った。
あとおがくずやインキでさえ美味しそうに見えた。ねずみのごはんもすごく美味しそうだった。
こういう、美しいとか魅力的だとか、美味しそうっていう、気持ちのいい感覚が、残酷でダークな世界に織り込まれていく。
それを、伝える、ってやっぱりすごいことだし、魔法だ。時代やアリスの子だって、その重なり方。奇跡そのものだ。


夢の中。ちいさい頃、行ったこともないのにいつも行っていた場所。眠る時、部屋の天井から宇宙へ行けて、海の街の石のトンネルの向こうにはどこにもなくて誰も知らない美しい景色が待っていた。
いまなつかしく感じるものってたくさんある。チューリップやフィルムやタオルケット、虹色のクマや空豆の皮。いつだって、夜に観る夢や語る絵空事は、突拍子も無い空想なんかじゃなかった。わたしたちがちいさい頃きっとそうだったように、アリスの国の世界もそうだった。
眠って目が覚めた時、なにも嘘にはならない。泣くこともなければ笑うこともない、歌は歌わない、誰もさがさない。うそじゃないから。
アリスのラストの台詞にぞっとする。

アリスが夢から覚めて部屋を見回す時、なんとなくわたしがちいさい頃によく図書館で読んでた「ミッケ」ていう絵本、思い出した。時々図書館の人に観せてもらってたいろんな外国の映画やアニメーションも。子供の時触れられない世界だったからこそ、わたしだけの世界だったな。
おもえばあの、不思議でどきどきする特別な甘い気持ちから、わたしはホラーやダークファンタジーを好きになったんだったなあ。いまだにあの気持ちさがしてる。
子供の観ている世界って、ウサギさんを心配したりお茶会によろこんだりするような純粋できれいなのばかりじゃなくて、この「アリス」にすごく近い世界だって、ほんとうはたくさんあるんだと思う。

とにかくなんかすごかった。

2018/5/27

あと登場する人間がアリスしか居ないのがまたすごいしこれも魔法の一つだと思う。