Iri17

アリスのIri17のレビュー・感想・評価

アリス(1988年製作の映画)
4.9
チェコの映画監督ヤン・シュヴァンクマイエルが、主人公のアリス以外を全て人形で撮影した何とも不気味な映画。
チェコと言ったらアニメーションの技術が非常に高いことで有名であるが、今作はまさにそんなチェコアニメーションの魅力が詰まった作品であると言える。

原案は『不思議の国のアリス』を基にしているが、この作品のアリスはどこかおかしい。絶望的で、家から出ようとしない。そして不思議の国の住人たちも原作より攻撃的である。
これは『不思議の国のアリス』を映画化したというより、ロリコンだった原作者のルイス・キャロルの深層心理を描いたような印象さえ受ける。

冒頭からのアリスのセリフも抽象的で、哲学的であり、決して華やかではない不思議の国も何か寓意的な印象だ。
しかし、シュヴァンクマイエルはいちいち説明するような野暮な真似はしない。だから何度も観たくなる。不気味で絶望的でどこか禁忌の官能性を閉じ込めたようなこの映画、人生で一度くらい観ておいて損はない。
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