教授

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンの教授のレビュー・感想・評価

-
実話だと思えないほどありえないようなことが、実際に起きてしまったことを「映画化」する強みに満ちた作品。

実在の詐欺師フランク・ウィリアム・アバグネイル・Jr.のあまりにもトンデモな半生を映画化した本作。
一番興味深いのは、フランク(レオナルド・ディカプリオ)と父親(クリストファー・ウォーケン)そして母親(ナタリー・バイ)との関係性の物語。

最新作である「フェイブルマンズ」を観てからだと、その境遇や関係性はまさにスピルバーグ監督自身が投影されている。
スピルバーグにとっての家族への思慕とストレスが映画に向かったのに対してフランクはそれが「詐欺師」に向かったということだけで、それがあまりにも「天才的な素質」に紐づいていることが興味深い。

自分の才能を見つけ、伸び伸びとその才能を活かす場を見つけて軽妙に成功していくフランクの姿は、撮影所に紛れ込みそのまま映画界に居場所を見つけて行ったスピルバーグそのものだ。
しゃにむに「働き」自らのステージを上げていき、容易く成功していくからこそ、挫折から学ぶことがなく「社会」の本質を知ることができない。
その足元の落ち着かない姿というのを残酷に描写している。

それを「ポップ」なストーリーラインに落とし込む職人的な能力の高さが見事。

正直、面白さで言えば、特に感じるものはなかったのだが、わかりやすいエンターテイメント的な映画の顔をして、生々しい独白を入り交えているテクニックにスピルバーグの成熟を感じる。
フランクが逮捕され、その能力を犯罪撲滅に活かすというラストも、家族の喪失の代償として使命感に突き動かされて働き続けるという、もうひとつのスピルバーグ自伝的要素が強くて面白かった。
教授

教授