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キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンのぴのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

 ついつい感心してしまうようなアイデアに、機転の利く頭と演技力、時には甘いマスクをフル活用して、なんとも軽快に人をだましていくフランク。すこし緊張感のある場面もあるが、どんなときも堂々と偽りの自分を演じる彼の詐欺が上手くいくたび、思わずこちらまで嬉しくなってしまう。特に好きなのは、いよいよ捕まってしまいそうになった終盤。パイロットになりきるきっかけになった光景、「パイロットとそれを取り囲むキャビンアテンダント」を、フランク自身が再現するシーン。空港に駆け付けた警察たちは、フランクを取り囲む美女たちに夢中で彼には目もくれない。なんとも痛快である。
 もちろん、詐欺をすることは全く持って良いことではない。それでも彼の詐欺は見ていて楽しいうえに「どうか捕まりませんように」とつい願ってしまう。それは、彼の詐欺を行う本当の理由が「ただお金がほしい」といった簡単なことではないことも関係しているかもしれない。彼はただ、お父さんが奪われたものを代わりに取り戻したかっただけなのだろう。仲の良い家族を取り戻したかったのだろう。しかしながらその夢も、お母さんの再婚を知るとともに崩れてしまう。お金も女も地位も手に入れたフランクは、今度は自分で「幸せな家庭をつくりたい」と願うが、詐欺師の彼にそれだけは叶わない。見ているこちらがついわくわくしてしまうフランクの詐欺と演技、しかし心は少年のままである彼を見ていると、なんとも切なくなってしまった。軽快なテンポで進む彼の偽りの日々と、彼の本当の心境、それらが上手く描かれているのがこの映画の良さだと思う。
 ハッピーなエンドもこの映画の良さだといえる。フランクが逮捕されるという結末は序盤に示されており、観客は皆「どうして彼は捕まったのか」気になりながら、フランクの姿を追うことになり、「フランクが捕まるという結末に向けての物語」であると意識して見てしまう。しかし、本当の結末はその先にあるという、なんとも粋な構成をとっている。おいかけっこをしていた正義と悪の関係であったカールとフランクの二人が、並んで正義の立場になる結末は、心の底から「フランク、良かったね」と声をかけたくなる。なにより、この結末も事実に則しているというのがなんとも良い。
 また、お父さんがフランクに言った「ヤンキースが勝つのは、ピンストライプのユニフォームから目が離せないからだ」という台詞は、まさにフランクの詐欺師としての生き方を表しているように感じた。最初は上手くいかなかった偽装小切手詐欺も、パイロットという誰もが憧れ尊敬する職種になりきれば、途端に調子が弾む。しかし、彼の身に着けた鎧は決して本物ではない。見た目や肩書きではなく、その中身、本質こそが大事であることに、フランクも見ているこちら側も気づかされる。また、クリスマスの夜に電話をかけてきたフランクにカールが放った「(君には)話し相手がいないんだ!」という台詞は、自分を偽り続けて人と関わってきたフランクに対する「『本当の自分』で話す相手がいないんだろう?」という厳しい言葉である。フランクに「嘘をついたことがあるだろ」と問われたときに返した「離婚したから『家族はいない』と(言ったんだ)」という台詞も、離婚した両親がまた仲良く戻ることを信じて願っていたフランクにとって、厳しい現実を突きつける言葉である。このように、カールはフランクに現実を突きつけるような言葉を度々発する。華麗に詐欺を行うフランクを見ていると、彼がまだ子どもであることをつい忘れてしまうが、そんな彼を追いかけるカールが、子どものフランクに良くも悪くも「本当のこと」を教えてくれる人物としても見えてくるのである。このように、ただの悪と正義のおいかけっこだけを描いているわけでもないのが、この映画のよいところである。
 そして、何よりレオナルド・ディカプリオの様々な姿を拝めるのもまた、この映画の良さといえる。高校生姿もパイロット姿も医者姿も逮捕されて伸び切った長髪姿も、どれも美しい。この映画はほぼ常にレオナルドが映っていると言っても過言ではないため、非常に綺麗な映像を目に映すことができる。
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