青二歳

442 日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍の青二歳のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

当時の首相東条英機、国連全権大使の松岡洋右が、開戦後日系二世に伝えた言葉に胸を打たれました。東条の手紙「これは君たち二世への手紙である。君たちはアメリカ人である。従って君たちの国に忠誠を誓わなければならない。」松岡の講演「二世はアメリカ人であり、アメリカに忠誠を誓うべきである」

これには一世も二世もたいへん戸惑ったのではないかと思われます。このメッセージは日系コミュニティの各リーダーと一世の親世代に広がっていったとあります。棄民と感じた人も少なくなかったかもしれません。

しかし二世のいう"お国のため"。日本語で親から伝えられていたその言葉に対し、「私の知る国はアメリカしかありません」
移民一世の頃の開戦だったら、日系部隊は作られなかったかもしれません。移民二世におけるアイデンティティーだからこそ成り立ったのでしょう。

わたしは移民政策には反対の立場です。日系部隊のように、その土地に貢献してくれる姿勢があるかどうか…相手を食いものにしよう利用しようとするだけでは信頼を得られないのも当然。
だって強制収容所への収監、忠誠調査書の提出という不当な扱いを受けた時、日本人移民一世及び日系二世は、90%がアメリカに忠誠を誓い、10%はその権利侵害と差別を訴えました。
この9:1というのが信じられない。6:4あるいは4:6でもいいくらいですよ。収容所に入れられてるんだから!!
でも9割。その土地に生まれることの重みを感じます。
結果、黄禍論ひしめくアメリカで葛藤を起こすことになったのでしょう。原爆を一度ならず二度落としたトルーマン大統領が、アメリカ陸軍兵として黄色人種の日系二世を迎えるシュールさに戸惑います。「君たちは敵と戦っただけでなく、偏見とも戦ったのだ」

一方その1割の行動に対しても、ダニエル・イノウエ議員は「それが彼らの正義だ、私たちも自分の正義を貫いた。それがアメリカだ」と評価しています。
差別を訴えるひとが一定数いたことはたいへん重要である一方、アメリカ人としてその土地に大きな貢献をしたことが、移民国家アメリカにとってその弾力性が問われる案件だったように感じます。

移民政策には受け入れる側、送り出す側ともに複雑な損益が絡みます(これは難民や不法入国とは別です)。
フィリピン移民二世は大戦中に日本兵として徴用され、かなり混乱し、その傷は今にも続いています。フィリピンで起きたこととアメリカで起きたことの違いはなんなのかを考察できたら、より移民政策というものへの理解が深まると思われます。
まだ知らないことがたくさんありますね…
というわけで、これはもっともっと知名度が高くなってほしいドキュメンタリーです。

ワイズマン等のドキュメンタリーに比べると、"伝えたいもの"がいくつか明示されていますが、ディレクションとしてそこまで偏ってる訳ではなく、比較的よいドキュメンタリーでした。
青二歳

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