奈緒子

パーフェクトブルーの奈緒子のネタバレレビュー・内容・結末

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

これ、面白過ぎて、レビュー書けずにいた。

まだ一回しか観ていないけど私の解釈では、

未麻自身が捨て切れなかった「アイドルとしての桐越未麻」を、アイドルにしがみつくるみが引き受けてしまう。つまり「アイドルとしての未麻」がるみの身体を「依り代」として実体化し、「もう一人の未麻」となってしまう。そしてその「もう一人の未麻」が暴走してアイドル像を壊した人々に復讐していくようになった。 

るみちゃんに関する伏線
・冒頭から彼女はあくびをすることが多い→「妄想代理人」マロミまどろみ でも見られるよう、現実から夢へ逃げていることの象徴。自分のことを未麻だと思い込む幻想を見ている。
・アイドルとしてそのまま歳をとり、芸能界で生き残れなくなった過去→アイドルとして芸能界に生き残れなかったるみは、自分ができなかった、女優への転身をする未麻を許せなかった。
・年齢の割にちゃんづけで呼ばれている違和感
・ストーカーのことを重く受け止めず、背を向けたまま「仕方ないでしょ。田所さんが警察には届けるなって言うんだもん。」
・パソコンに詳しい→「未麻の部屋」は るみ が開設したものだった。マネージャーとして未麻の行動を逐一日記に書くことができた。ME-MANIAと連絡をとっていたのも未麻のふりをした るみ。
・レイプシーンを撮影したとき、本物の未麻と同様泣きながら部屋を退出し姿を消す。その後未麻とるみが対面することはしばらくなくなるが、この時、もう一人の未麻と会うようになる。
・最後にるみが未麻の部屋に行くわよと言って言った部屋は未麻の部屋に似せた、るみの部屋。だから内装は全く同じでも、魚が死んでいないし、ポスターも破られていないし、窓の外の景色も違う。

未麻の幻想が「依り代」を見つけた、それがアイドルのまま歳をとり売れなくなったるみちゃん。
「大丈夫。幻想が実体化するなんてあり得ないもの。」 
それがあり得ちゃったのよー。


日本特有のアイドルの処女性、閉塞感

 未麻はアイドルの処女性や、アイドルを脱皮するという名目で彼女を性的対象物として見る世間に翻弄されてしまう。わたしは汚れてしまったから、無垢であるべきアイドルには戻れない。とアイドルの純潔性の呪縛に苦しむ。未麻「ちゃん」という少女ではいられなくなり、未麻という女「性」になることを余儀なくされる。この点ではロマン・ポランスキー監督、カトリーヌ・ドヌーヴ主演の「反撥」を思い起こさせる。
 そしてラスト、「わたしはわたし!」他の誰にも翻弄されることなく、自分を自分として認めることができるようになる。「わたしは本物だよ」という未麻は少しばかりるみちゃんに顔が似ていて「もしや偽物?」とぞっとさせるズルいラストシーンだけど、るみちゃんを踏み台にしても生き続ける強い大人の女になったという後味良いラストだと今のところ信じてます。

追記:「わたしは本物だよ」でバックミラーの中で微笑む未麻。鏡に映る虚像であることを受け入れながらしたたかに生きる決意。



虚構と現実

今敏監督作品は「妄想代理人」と今作しか見ていないけれど、どちらもどストライクだった。虚構と現実の間で翻弄される映画大好きだ。。。
どっちの作品も、虚構(テレビの中の虚構世界であるアニメやドラマ、そして人間の中の幻想世界、夢)と現実が混じり合う。テレビのフレームの中にあるものは私たちの頭の中の状況を反映しているよう。「パーフェクト・ブルー」では、主人公はそんなテレビの中の世界、虚構の世界で生きているから、自分の持つ虚構、夢の世界にも簡単にハマっていく...。
奈緒子

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