ウサミ

パーフェクトブルーのウサミのレビュー・感想・評価

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
4.5
現実と虚構のトリップ 壊れゆく心を緻密に描いたサスペンス・アニメーション

アイドルのミマちゃんが、女優に転身し、厳しい芸能界を生き抜こうと奮闘する物語。
といえば聞こえはいいですが、この映画は、その奮闘の様子をとんでもなく奥深く、サスペンスフルに描いています。


映画によって描かれるのは、現実と虚構。
話が進むにつれ、何が現実で、何が虚構であるかがわからなくなっていく。
そして、そもそもこの映画自体が1つの夢なんじゃないだろうか…?と疑うようにさえなります。
その見せ方が非常にうまく、観客に思考を巡らせ、最終的に、それらに対して驚くような答えを提示してきます。

とにかく、サスペンスとして単純に脚本が面白い。映画が進むにつれ少しずつ暴力性が過熱していく様は、サイコスリラーとしての恐怖を感じ、背筋を凍らせながらも見入ってしまいました。
「人間の狂気」、その中の“理にかなった理不尽”の恐ろしさと、そこに興味を惹かれてしまうという矛盾、それらが本当にうまく描かれていました。


R15指定、海外ではR18という場合もあるそうで、流血描写、結構ショッキングなシーンがあるため、苦手な方は注意してください。


芸能界という異世界に身を置く。それはアイデンティティを溶かしてそこに同化するということなのか。

「あなた、誰なの…?」

自らに問いかけるうちに、何度も心で反芻するうちに、少しずつ、壊れていく。

現実と虚構が曖昧になる中で、自分とは何か?の問い、その深い深い溝にはまり、ズブズブと沈んでいく。
その様が、音楽、アニメーションといった様々な演出で描かれているのが素晴らしい。

とにかく感情を揺さぶられ続けた80分間。とにかく観て損はない映画だと思います。


「ブラックスワン」を観た感覚と似ていました。正直目を背けたくなることも多いんですが、それ以上に映画に惹きつけられ、どうしても観るのをやめられない。
逃げ出すことのできない現実と苦悶するマミの心情を、観客に乗せてくるのが本当にうまい。


自分の信じたくない「現実」を、「虚構」として合理化、昇華することで身を守ろうとする。

なにが本当で、なにが自分なのか

そこと向き合うことがいかに難しいことか。
その困難にくじけそうになるとき、時に人は偽物を本物と信じ込むことで、身を守ろうとするのかもしれません。
ウサミ

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