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パーフェクトブルーのkaitoのレビュー・感想・評価

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
4.8
あなた、だれなの


『パーフェクト・ブルー』

映画『パーフェクト・ブルー』は僕にとってはじめての今敏作品だった。1月初頭に観たにもかかわらず、ここまでレビューを引き伸ばしてしまった。御免

この映画を終えた時、一つのとある作品に似ているものがあると感じた。
ダーレン・アロノフスキー監督による、そしてナタリー・ポートマンが主演を務める『ブラック・スワン』だ。どういう点が似てるかと問われれば、映像での魅せ方ももちろんそうだが、キャラクターが崩壊していく様子が最もそうだと感じた。

本作は主人公である未麻がアイドルを脱退し、ドラマ女優へと転身していくところからスタートする。映画に出てくるドラマのセリフ、「あなた、だれなの」は彼女自身に向けられた言葉で、『パーフェクト・ブルー』全体に通ずるセリフであるように感じる。

演技と素         虚構と現実

彼女が次第に自身をなくし、なにが本当の自分なのか分からなくなっていく過程は観ていて非常に興味深い。未麻が電車で俯いている時に、反射している窓の向こうではもうひとりの未麻が笑っているシーンは視覚的に面白かった。鏡はありのままの自分を映し出すという言葉を聞いたことがある。鏡にいる未麻は毎度の如く、アイドルの衣装を着ている。本当の彼女はアイドルになっているときにあったのだろうか?

キーアイテム、キーワードが程よくあり、かなり緊張感と不穏な空気が漂う今敏の『パーフェクト・ブルー』は間違い無く傑作であり、一件の価値が十分にある。未見の方はぜひ。
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