tanayuki

パーフェクトブルーのtanayukiのレビュー・感想・評価

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
4.6
「幻想が実体化するなんてありえないもの」

夢か現か幻か。アイドル未麻りんを忘れられないストーカーと、ネット上の「未麻の部屋」で本物の未麻を自称するニセモノと、ニセモノの未麻に邪魔者扱いされる本物と、劇中劇「ダブルバインド」で未麻が演じる矛盾したメッセージの間で板挟みになって精神を壊すキャラクターと、(夢なのか現実なのかは判別しがたいが)未麻の視界に現れるバーチャル未麻と、現実の未麻と過去の未麻とあったかもしれない未来の未麻とが入り乱れ、見る者を惑わせ、擬似的に人格崩壊を追体験させる入り組んだ構成が見事。本人が自認する未麻と、周囲が期待する(と本人が思い込んでる)未麻とが乖離し、夢と現実が交錯して、未麻じゃなくても正気を保つのがむずかしい状況がこれでもかと続く。

「あなた誰なの?」
「私は本物だよ」

本物ってなんだよ。

追記: 他の人のコメントでブラックスワンは本作に影響を受けたと知って、見返したくなった。そうか、たしかによく似ている。

△2020/09/11 Apple TVで407円レンタル。スコア4.6
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