MasaichiYaguchi

トムボーイのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

トムボーイ(2011年製作の映画)
4.0
2019年の第72回カンヌ国際映画祭で脚本賞とクィア・パルム賞を受賞した「燃ゆる女の肖像」のセリーヌ・シアマ監督の長編2作目は、家族と共に新しい街に引っ越してきた10歳の少女ロールが、引っ越し先で「ミカエル」と名乗り、新たに知り合ったリザたちをはじめとした子どもたちに自分を男の子だと思い込ませた一夏を瑞々しいタッチで描いている。
ロールは「ミカエル」に成り切る為に“偽装”したりするのだが、可愛い妹とのやり取りを含め、その有り様が見ていて微笑ましい。
やがてロールはミカエルとしてリザとは2人きりでも遊ぶようになり、彼女が自分に好意を抱いていることに葛藤しつつも、お互いに距離を縮めていく。
しかし間も無く新学期、夏の終わりはすぐそこまで近づいていて、いつまでもロールはミカエルのままでいられない。
果たして、ロールはどうなってしまうのか?
タイトルの「Tomboy(トムボーイ)」は英語でお転婆やボーイッシュを意味していて、正に本作のロールを指している。
このロールと大人びたリザとの関係は、リザが「ミカエル」として接近したとしても、ちょっと同性愛的な雰囲気を淡く感じてしまう。
少女であれ、少年であれ、やはり夏休みは忘れ難い思い出を残す。
ラストシーンにある甘酸っぱさから、何となく井上陽水さんの「少年時代」の歌詞の一節を思い浮かべてしまった。

夏が過ぎ 風あざみ
誰のあこがれにさまよう
青空に残された
私の心は夏模様