ソラアユム

PUSH 光と闇の能力者のソラアユムのレビュー・感想・評価

PUSH 光と闇の能力者(2009年製作の映画)
3.5
予知の応酬


能力者を管理しようとする組織「ディビジョン」と主人公ら能力者グループとの闘いを描くSFアクション

良くも悪くも映画的ではない作品だと思いました。良い所も多いんですが、根本的な部分のそこかしこで不備が生じていて正直なところあまり良い出来の作品とは言えません。

良かったところ

どうしても『X-MEN』というそびえ立つ壁があるために期待値も低かったんですが、思ったよりは面白かったです。かなり地味な能力バトル物で私が見た作品の中だと1番『HEROES』が近いかなと。個人的に『HEROES』は大好きな海外ドラマシリーズなので、今作の序盤を見た第一印象には大変好感が持てました。

戦闘のために修めた能力を前面に押し出しがちな昨今のSFアクションの中で、未来予知能力者=ウォッチャーや記憶改竄能力者=プッシャー、サイコメトリー系能力者=スニッファーをストーリーの中心に置いていたのが何よりも良かった。同じ能力者同士でも能力に上下関係があったりなかったり、能力者自身が自分の能力を充分に把握していない点など作品全体に漂う曖昧さ加減、雰囲気が妙にリアルで好みでした。
ジャイモンが「ビクタァァー」て叫ぶ所がメチャカッコ良かったです。満を持してい本格的な能力バトルが始まる瞬間だったので。

それだけに残念。

ストーリーの根本的な部分がかなり粗いです。前半はトランクケースが何処にあるのか?というのがメインのお話で主人公グループにウォッチャーやスニッファーがいるにもかかわらず、何かと理由を付けて中々場所を特定できずにいる。かと思いきや突発的に何の理由付けも無しに未来が見通せるようになったりご都合主義が目立っています。
後半では、敵対している勢力にもウォッチャーがいて主人公らの行動がつつ抜けになってしまうのでトランクケースをどうやって持ち運ぶか?みたいな展開になりますが、そのトリックも説明不足過ぎて何故そうなるのか全く分かりません。
さらに言うなら、トランクケースの中身も本当にどうでもよくて何故必死こいて探し回っているのか理解できません。結局主人公にも全く関係ありませんし。
そもそも「ディビジョン」という組織の目的が能力者の管理であるはずなのに、主人公らを捕まえようとせず泳がせている理由が分かりません。未来を変えないためという理由はありましたが、じゃあ何故未来が変わったのか、主人公グループのどんな行動があのような結果を引き起こしたのか、物語上必要最低限の説明やロジックが欠落しています。未来予知やサイコメトリーを用いてさっさと危険因子である主人公グループを一網打尽にすれば、少なくともより確実な未来が見えると思いました。

うまくいけばかなり面白い能力者同士の頭脳戦になり得たと思います。只々惜しい残念な作品でした。