和桜

つぐないの和桜のレビュー・感想・評価

つぐない(2007年製作の映画)
4.0
少女に芽生えた嫉妬と嘘が、二人の男女の人生を狂わせる。引き離された二人の運命と、その罪の重さに気いた少女の償い。原作はイアン・マキューアンの『贖罪』。
戦争という不可逆な力が加わり、子供の嘘が取り返しのつかない事態を招く恐ろしさ。そもそもあれを嘘と呼べるのか。あのラストは償いと言えるのか。様々なものが曖昧なままに終わる。正直複雑な気分になるが、そうした展開はそれ自体が選択肢の不在を意味していて、罪を償うことの難しさを示している。

ダンケルクに関する映画は増えたけど、未だに強く思い浮かぶのはこの映画の風景。男が辿り着いたダンケルク海岸は圧倒的な迫力と映像美で描かれる。
戦火が迫る荒廃した世界の中で、狂ったように笑いながら遊びに興じる兵士達。歌声や銃声が響き渡る混沌が、5分近い長回しで撮られていて頭から離れなくなる。
同監督の『ウィンストン・チャーチル』で彼らの救出作戦へと繋げる粋な計らいも良い。

今思えば役者陣はマカヴォイ、キーラ・ナイトレイ、シアーシャ、カンバーバッチという夢の共演レベルの豪華さ。しかし、生々しい役柄が多いせいか、あまり喜べないのも事実。特にカンバーバッチに関しては、役に入り込んでいるという褒め言葉として気持ちの悪さが溢れていて、こんなカンバーバッチ見たくなかった映画ナンバーワン。

この映画を見ると、『偽りなき者』のその後の話が見たくなる。あの女の子は成長した後に何かしらの後悔や罪悪感のような感情を抱いたのか、背負ったのだろうか。
和桜

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