ルコントの映画は不細工な中年と癖のある美女の奇妙な恋愛を描いたものと、男同士の友情を描いたものとに大別できるが、これは後者の極北だろう。
ダニエル・オートゥイユ演じる美術商フランソワがその傲慢な性格ゆえに友達が一人もいないことに気付き、友達作りに奔走するという、珍妙なコメディ。
オープニングの、主人公の行く末を暗示させるような実に陰鬱な葬儀の場面からして嫌味だが、直後に仕事仲間たちから「この場にいる誰もお前を友達だとは思っていない」と告げられる場面はなかなかにシニカル。まるで漫画のようだ。
その後、流れでダニー・ブーン演じるタクシー運転手ブリュノと親しくなるが、彼らの対比が面白い。
フランソワはごく最低限なもの以外コミュニケーションをとりたがらないためになかなか打ち解けず、また常に傲慢なため、嫌われてしまう。対するブリュノはいつも愛想がよく、見ず知らずの人ともすぐに打ち解ける一方、様々なトラウマにより、実は「真の友情」に対して懐疑的で、かつ極度のあがり症でもある。
両者の個性を上手く表現しているが、フランソワがブリュノに壺を盗ませる場面は、さすがに漫画っぽすぎやしないか?(面白いけど)
必死に守りたい友情と虚栄心を象徴するような壺の使い方も面白いし、後半はまるで「スラムドッグ$ミリオネア」だし、よく見たらジュリー・デルピーのお母さんや「ニキータ」に出てきた日本人みたいな顔したおっさんが出てたりと、なかなか個性派揃い。
ただし、日本人である我々に唯一理解できないのは「なぜ友達が一人もいない主人公がバツイチで愛人もいるの?」ということ。共同経営者の女もあくまでレズで、主人公とは何も起きないし...。恋愛と友情は違う、っていうフランス人的な人生観なんだろうけども。