らんらん

にごりえのらんらんのレビュー・感想・評価

にごりえ(1953年製作の映画)
3.5
樋口一葉原作の短編3作のオムニバス映画
文学座の俳優さんが総出演な作品なんですが、クレジットはほんとにメインの人達しか記載されてないのでこれ誰だろってのがかなり

【第1話 十三夜】★★★★☆
10/15、秋の月明かりの綺麗な夜、丹阿弥谷津子は実家に帰ってきた
女遊びが激しく何かとつらく当たる夫に耐えきれなくなり幼い息子を置いて出てきたのだ
それを聞いた母田村秋子はそんな家には帰ることない!と憤慨し、辛い毎日だった娘を思い涙をこぼす、だが父三津田健は今まで耐えてきたのだからこれからも耐えられない道理はない、家を出ても子供を置いてきたことで後悔して泣くのだから、どうせ泣くのなら帰って辛さに耐えて泣け!ただこれからはお前の辛さ悲しさはみんなで分け合うと諭すのだった
それを聞いて丹阿弥谷津子は改心、息子のため、父母弟のため帰ることにする
そしてその帰り道、人力車夫の男が幼馴染の芥川比呂志であると気付き話し合う2人、、、

第1話は30分くらいの短さなんだけど、なかなかに濃い内容
つまりは耐えられないほど辛い!こんなわたし可哀想、こんな不幸なことってないわー!って思っちゃうこともあるんだけど、それ以上に辛いこともあって、不幸比べ?ってわけじゃないけど、まだ頑張れる頑張らなきゃ!みたいなお話

丹阿弥谷津子さんが綺麗、そして娘が家出してきたのを知った両親のリアクションの違いが良い
100%味方な母親田村秋子も素晴らしいし、一見冷酷な父三津田健の諭しも素晴らしい
月明かりの明と暗も上手く使われているのも印象的

【第2話 大つごもり】★★★☆☆
12/15、女中の久我美子はお暇をもらって育ての親中村伸郎&荒木道子を訪ねる
そこで2円の借金を頼まれたのだがなかなか女将さん長岡輝子に言い出せないままに大晦日を迎える
意を決して言い出したものの、けんもほろろに断られ絶望する久我美子
そんな時引き出しの中にお金があることが頭をよぎり2円抜いてしまう、いつバレるか、バレたらどうなるのかのドッキドキ!

オチは何となく予想したパターンの中にありました、ドラ息子仲谷昇が実はいい人だったらなーとか思ったけど最後までドラ息子なパターンだったw
それにしても重要な役の仲谷昇、序盤で存在感を出す女中仲間三崎千恵子、山村家次女岸田今日子がノンクレジットなのがある意味すごい
この作品も30分ちょっとの短さ、お金をくすねちゃった罪悪感、いやーな緊張感がたまらない作品
あの清純な久我美子がそれをやって、いやみなクソババア長岡輝子にいつバレるのか、このあたりの人物描写、キャラクターがあるから尚更効果増しって感じ
特に長岡輝子のクソババアぶりが素晴らしいですね

【第3話 にごりえ】★★★☆☆
7/2からの一ヶ月の物語
遊郭菊乃井の遊女淡島千景は若くて綺麗なので人気者
宮口精二なんかは惚れ込んじゃって通いつめた挙句お金を使い果たし今では落ちぶれている
それでも尚店の周りをうろつき諦めきれない様子
宮口の妻杉村春子は何とか夫を立ち直らせようとするが、宮口はほとんど廃人風でどうしようもない
淡島千景のほうはというと、店の周りをうろつく宮口精二を避け決して会わない
騙すのも商売と割り切れば楽なんだろうけど罪悪感があるのか憂鬱な日々を送る、そんな時山村聰が通ってくる、、、

メインタイトルにもなっている作品だけあって60分ちょいと一番長い
ただよくわかんない度でも一番、そして一番文学作品っぽい
オチがよくわからない、何があったの???
無理心中?合意の心中?どっちかなー、よくわかりませんw

前半は淡島千景や山村聰、遊郭の人間模様を描き
後半では宮口精二と杉村春子をメインに夫婦の言い争いが描かれる

個人的には前半結構好き、遊郭の女たちの生々しさ、夏の暑さってのも上手いこと使ってる感
淡島千景以外の遊女賀原夏子、文野朋子あたりのババくささがすんごいのw だらしない格好で大口開けてガハハと笑う、そりゃこの中にいたら淡島千景に人気集中するわw

あとノンクレジットで小池朝雄、神山繁、加藤武が出演してます
まあ出てるだけで何があるわけじゃないけど、ただこの辺りの人になるとさすがにちょっと顔見ただけでわかりますね

【まとめ】
オムニバスもののレビュー描こうとするとどうしても長くなってしまうのが難点
順位をつけるなら1>2>3かなー、第1話が一番好きかも
見る前に一番期待したのは第3話だったけど、いかにも文学作品って感じでよくわりません!

それにしても何気に出演者が凄かった映画、そしてみんな上手い!適材適所それぞれ魅力のあるキャラクターを演じています
主役の丹阿弥谷津子、久我美子、淡島千景も勿論良かったけど
田村秋子であったり長岡輝子、賀原夏子、杉村春子とか中年女優のみなさんが素晴らしかった!
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