あいうえお

ペーパー・ムーンのあいうえおのレビュー・感想・評価

ペーパー・ムーン(1973年製作の映画)
5.0
詐欺師の男が両親を事故で亡くした9歳の女の子を、身寄りの元に送り届けるまでのロードムービー。去年観て、今まで観て来なかったことを激しく後悔。

あらすじだけ見ると男が改心して行いを善くするような話だと思うかもしれないけど、さにあらず。男はしょっぱなから少女を利用してお金をだまし取るし、少女のほうもノリノリで詐欺に加担する。それでも気分は悪くならず、むしろこの二人を応援してしまうのがこの映画のすごさ。

それだけ人物が魅力的で人間くさい。実際の親子が共演しているからか、掛け合いも息ぴったり。監督が意識して長回しにしたという二人の会話シーンは微笑ましく、いつまでも聞いていたくなる。

特に少女の演技力には舌を巻く。当時史上最年少で助演女優賞を受賞したらしく、記録は今でも破られていない。怒ったり、すねたり、笑ったり、泣いたり、これだけ表情豊かに、吸い込まれるような魅力を放つ子役はもう登場しないんじゃないかと思うほど。可愛すぎてなんだか娘がほしくなる。

ちなみにこの映画はモノクロだけど、公開されたのは1973年。舞台である1930年代の雰囲気を出すためにあえてそうした模様。モノクロ映像の雰囲気と、メインテーマ曲の「It's Only A Paper Moon(ナット・キング・コール)」がよくマッチしていて、いつまでも心の奥底にこびり付く映画です。
http://youtu.be/kgNef0mgOeI