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フィラデルフィアのtjZeroのレビュー・感想・評価

フィラデルフィア(1993年製作の映画)
4.2
HIVの症状が進行中の弁護士アンディ(トム・ハンクス)は、病への偏見で解雇されたと元の法律事務所を訴える。
彼に手を差し伸べたのは、著名な黒人弁護士ジョー(デンゼル・ワシントン)だった…。

クローズ・アップの多い映画が苦手だった。
顔のアップばかりだと、TVドラマ観てるみたいだし。
せっかくの大画面なんだから、引いた画で雄大な風景とか役者の全身を使ったアクションとかを楽しみたい。

ただ、本作の場合、クローズ・アップの多用が効果的。
症状が進むにつれて顔色、生気、肌の艶などが変化していくアンディの表情や、当初はゲイに偏見を持っていたジョーが理解と共感を深めていく心情が克明に捉えられている。

『ストップ・メイキング・センス』という至高のライヴ映画も撮っているジョナサン・デミ監督は、本作で法廷をライヴ会場のような臨場感を持って伝えることに成功している。
すぐれたミュージシャンの口元や手元にグッと観客の視線が引きつけられるかのごとく、原告と被告側の弁護士の丁々発止のやりとりがアップで捉えられ、陪審員の一員として臨席しているかのよう。

舞台となり、題名にもなっている”フィラデルフィア”の意味も大きい。
劇中でも言及されるとおり、「すべての人間は平等に造られている」という精神の米国独立宣言が生まれた街。
そして映画ファンにとってはもちろん、同じくマイノリティだったロッキー・バルボアが己のアイデンティティーを力強く証明した舞台としてもおなじみ。
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