里紗

イキガミの里紗のレビュー・感想・評価

イキガミ(2008年製作の映画)
4.5
「この国には自由がある。平和があり、豊かさがある。しかし、ほんの一握りの国民はある日突然、容赦なく国家によって切り捨てられる。」
ハートフルで泣けるだとか、ヒューマンドラマとかって言えばそうなんだけども。一貫してディストピア感とかサスペンススリラーみを保っているのが素晴らしいなあと思えた作品でした。

とりあえず泣いた。泣いた、泣いた。びびるぐらい沢山泣いた、、まずほんの若い人たちが、大きくて抗いようもないものに呑まれて死んでいくわけで、それがお国のためというのはまあ私たちが今生きてるこの時代を作るまでに実際にいくらだってあった話で。
私が生まれた平成という時代は、戦争がなかったと聞いてああそうか、、と思ったこともあったよなあとぼんやり思い出したりしました。
そしてそういった誰かの気持ちや時間の上に今自分たちが立っているのだよなあということも。

この映画は一端の、ほんの何人かの人たちがもがいてただけの物語だし忘れられていく人たちばかりだけど、そのシンプルさが本当に良い。
ていうか音楽が良すぎる。ミチシルベ、胸がぎゅーっと苦しくなって、でもあったかくて本当に好き。悲しい時に食べるおにぎりと同じ暖かさをしている、、

そして松田翔太のほっそりとした佇まいと存在感、いいよなあ。今から見ると時代を感じる世界観も、どこか懐かしい気分になる。
どうしたらいいか、ちゃんとストーリーに乗せるためだけじゃなくてみんながそこにいて考えているのが分かる。だからこそ生まれる意外な展開や答えが本当に記憶に残る。めっちゃ好きでした。
里紗

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