ブタブタ

蛇の道のブタブタのレビュー・感想・評価

蛇の道(1998年製作の映画)
4.5
Vシネマのフォーマットで作られた全く別の映画。
元々は三部作の予定が制作会社の変更等で二作品のみとなり、奇しくも『CURE』と三部作の様な感じになってる(と思う)
そして同年公開の『リング』とも高橋洋・脚本で或る意味腹違いの双子のような映画。

恐らくはヤクザのシノギの裏ビデオ制作、其れも少女スナッフビデオという最悪な代物の犠牲になった娘の復讐を開始する男・宮下(香川照之)と何故かそれに協力する塾講師・新島(哀川翔)

塾のシーン。
ひたすら黒板に全く意味不明の複雑な数式を書く新島。
その解を生徒の少年が書くも「これじゃ時間が逆転して世界が滅茶苦茶になる」
すると今度は生徒の少女が出て来て数式を解く。
時間が逆転して滅茶苦茶になった世界を少女が修正した?
或いは滅茶苦茶になった世界を更に滅茶苦茶にしたのか?

ヤクザを拉致して拷問。
拉致した大槻というヤクザは組長・檜山がやったと言い、拉致した檜山は殺せと命じたのは宮下だけで娘はこいつが勝手にやったと互いに罪を擦り付け合う。
この辺りから全体の様子がおかしくなっていく。
新島は、実は宮下は狂っていると言い出し「生け贄」として宮下を納得させるニセの真犯人を差し出せと二人に言う。

ニセの真犯人・有馬の手引きで誘き出された檜山の組の面々との廃墟での対決。
明かされる事実と殆ど一方的な宮下によるヤクザ成敗。
カメラと人物が2Dゲームの横スクロールの動きをしていて、更に其れが横スクロールと縦スクロールが交錯し、プレイヤーである宮下が画面の外にいる時、画面の中の人物は宮下を認識出来ない。
だから突然宮下が現れて一方的にやられる。

檜山の用心棒?女殺し屋「コメットさん」が強烈。
啞で足が不自由なのに作中最強の存在。
新島も「コメットさんがヤバい」ってコメットさんを非常に畏れてる。
カクカクした動きと仕込みサーベルの居合切りの一撃で相手を倒す「コメットさん」はテレビから出て来る貞子や黒沢清作品の「ガラスに写真を貼っただけの幽霊」みたいな次元を超えてやって来る、この世の物でない存在。

この作品も長らく鑑賞環境が限られていて、DVD、BluRayの新装版が発売されるも既に品薄状態みたい。
新パッケージは新島と宮下が檜山の入った袋を引き摺って芝生を滑っていくいく場面が使われてるけど、『蜘蛛の瞳』の新島とダンカンが海辺でプロレスごっこしてるみたいな写真と並び何処か楽しそうな、北野武監督『ソナチネ』の死を前にした男達が無邪気に遊ぶシーンを想起させる。

『蛇の道』の柳ユーレイ『蜘蛛の瞳』ではダンカンと、たけし軍団の俳優を起用してるのは北野武映画への目配せというかオマージュ的な意味か?

胸糞悪いラストで後味は極めて悪い、との意見も多いが個人的には全ての復讐が完璧に成し遂げられて胸のすくような結末だと思う。
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