垂直落下式サミング

パニッシャー:ウォー・ゾーンの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

2.0
過激ぶりっこ系。嫌い。観客の共感を拒むような正義の味方、一方でヴィランたちには血が通っている変なバランス。
ヒーロー映画で主人公が正義とアイデンティティの狭間で苦悩する描写はよくありますが、それは完全無欠とも言えるような善を遂行するヒーローが悩むからそこに物語的な葛藤が生まれるのであって、本作のように映画が始まってすぐに善人を間違って射殺するようなクズにはさっさと身を退いてもらうしかない。ストーリーが進んでいくほど、決断ができないくせにクールぶっている主人公が嫌いになってくる。免許返納しろジジイ。
対して、悪役たちは仲間同士で冗談を言い合ったり、家族とか美醜に執着してる人間臭い連中で、なかなか愛くるしい。少なくとも、映画のなかでパニッシャーほど積極的に人を殺す悪人はいないし、ギャングたちはただ漠然と悪いだけで、その悪行の実態と一般人の被害を具体的にみせてくれないため、コイツらがどの程度危険人物なのかいまいち掴めず、犯した罪に対して制裁の度合いが不釣り合いに見えてしまって、殺されるのはちょっと可哀想にみえてくるから始末が悪い。まがりなりにも現代劇で、ギャングの悪党性をここまでソフト化する必要があったのだろうか。
こうも軽々しく死を描かれるとスプラッタの嫌な所ばかりに目がいってしまう。パニッシャーが子供の目の前で無抵抗の悪党を撃ち殺すシーンが一番嫌でした。ここはマジで最低。目とか塞いでなかったから、あの子は人間の顔面が散弾銃で撃ち抜かれて肉片になる瞬間を見てしまったはずなんですよ。こういう雑さが大嫌い。人の善悪についてのおはなしをしているはずなのに、作り手は倫理や道徳にあまりに無頓着ではないか。