みかんぼうや

レイジング・ブルのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

レイジング・ブル(1980年製作の映画)
3.6
【粘着質で嫉妬深く猜疑心に満ち溢れたボクサーの身からでた錆的な破滅的半生】

格闘技・ボクシングが好きな自分としては、いわゆる王道な成り上がりチャンピオンのスポーツ物を期待して見始めたので、序盤から主人公ジェイク(実在のボクサー)のやや破滅型な性格と言動を見て、「あ、この作品、期待している感じではないのだな」と気づきちょっと心配でしたが、そこはさすがスコセッシ!変わらずの抜群のテンポの良さと飽きさせない演出で、最後まで集中力途切れることなく楽しめました。

話としては、“レイジング・ブル”と言われたミドル級ボクサーである主人公ジェイクの嫉妬深く粘着質で猜疑心の塊、おまけに暴力的な性格による“身から出た錆”的な話で、その自業自得な破滅型人生をドラマチックに見せた作品です。なので、ボクサーとしての努力や成功にはあまりフォーカスされず、まさに“錆”側のほうがクローズアップされています。しかし、この“錆からの破滅”を描くプロ中のプロであるスコセッシ(後の「ゴッド・フェローズ」や「ウルフ・オブ・ウォール・ストリート」など)としては、この類は十八番ですから、ジェイクの苛烈な性格やそれにより自滅していく様子が大変分かりやすく、そして見事に描かれています。

そして、スコセッシの演出はもちろんですが、本作はやはりアカデミー賞を受賞したロバート・デ・ニーロの演技無しには語れないでしょう。特に有名な“デ・ニーロ・アプローチ”である作品中の20kgの増量には彼の俳優魂の凄まじさを感じます。見事な引退した後の不摂生なボクサーのボテボテな体を作り上げて!?います。

“あっと驚く意外性や衝撃性”があったり“興味深い特殊な設定やトリッキーさ”があるわけではないので、個人的に“もの凄くハマった”とか“大好きな作品”とまではいきませんでしたが、映画としてのエンタメ性と人生の教訓的メッセージ性を兼ね備えた秀作でした。
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