元ボクシングチャンピオン、ジェイク・ラモッタの半生を描いた、マーティン・スコセッシ監督のボクシング映画。
"Go get 'em, champ."
"I'm da boss, I'm da boss, I'm da boss, I'm da boss, I'm da boss... I'm da boss, I'm da boss, I'm da boss, I'm da boss, I'm da boss, I'm da boss."
本作は、マーティン・スコセッシ監督作品の中で、世間の評価と自分の評価の間に一番隔たりがある作品。
2度目の鑑賞でもやはり好きにはなれなかったが、スコセッシ監督が描きたかったことは初見時より見えてきた気がする。掘りがいのある奥深い人間ドラマがあった。最後の聖書の引用は未だにピンときていない。3度目はもっと好きになる可能性が十分にある。
この世のボスになるという支配欲や征服欲に満ちた男、一般常識がなく暴力でしか自分の感情を表現できない男の半生。ボクシング引退後は、"That's entertainment."と、クラブ経営やスタンドアップコメディアンとして生計を立てる。孤独な男が生きる妄想の世界。鏡の前で自問自答する姿は、『タクシードライバー』『キングオブコメディ』『アビエーター』などとも重なる。
ボクシング映画というより暴力映画。スコセッシ監督は、主人公ラモッタの内面を描くことにしか興味がないように思える。ボクシングシーンをこれほど冷めた目線から撮ったボクシング映画も珍しい。スポーツ嫌いのスコセッシ監督らしいボクシング映画だ。
本作は、スコセッシ監督が映画監督として行き詰まり、薬に溺れ、精神的にどん底の時期に制作された作品らしい。終始陰気で殺伐としており、死の匂いが漂っている。お馴染みの爆発的な暴力に加えて、偏屈さ、醜さ、猜疑心、嫉妬心などが詰まっている。痺れるような格好良い画はない。
主人公ジェイク・ラモッタは本当に酷い男である。スコセッシ作品に登場する男は、どんな悪事を働く人間でもカリスマ性や知性、世渡り術、大人の余裕など何かしらの魅力を備えているか、少なからず共感できる心の闇を抱えていることが多い。しかし、本作の主人公ジェイク・ラモッタにはそれらがない。本作を観たジェイク・ラモッタ本人は、初めて自分の酷さに気づき、涙したらしい。このエピソードが、本作の存在意義を示していると思う。
『波止場』をモチーフにした2つの傑作ボクシング映画。光の『ロッキー』、闇の『レイジング・ブル』。己に打ち勝ってアメリカンドリームを掴んだのが『ロッキー』、己に負けて全てを失ったのが『レイジング・ブル』。スターローンの『ロッキー』、スコセッシの『レイジング・ブル』。
"You didn't get me down, Ray."
どんなに落ちぶれてもプライドは残っている。装飾の宝石は売れるが、チャンピオンベルトは手放せない。
スコセッシ監督×デ・ニーロ×ジョー・ペシによる1作目。ロバート・デ・ニーロが自身の持ち込み企画により、マーティン・スコセッシ監督のキャリアを救った作品でもある。デ・ニーロとジョー・ペシは撮影前から合同トレーニングを行い、実の兄弟のような関係性を築いたそうだ。撮影中も"Hit me "シーンやスパーリングシーンなどで実際に殴り合っている。デ・ニーロはジョー・ペシの肋骨を折ってしまったらしい。
モノクロ映画にした理由。『ロッキー』と差別化するためと、スコセッシ監督が血のカラー描写を嫌ったため。あと、ジェイク・ラモッタが「自身の過去を回想すると、モノクロ映画を見ているような気分になる」と言ったから、だそうだ。
デ・ニーロは役作りのため、高強度のトレーニングに励んだ。実際、ブルックリンのボクシングマッチに3試合出場し、2勝したらしい。
2(再)
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2020.11.8 記
実在のボクサー、ジェイク・ラモッタの波乱万丈の半生を描いたヒューマンドラマ。
典型的なボクシング映画ではなかった。
ボクシングチャンピオンでありながら、心が弱く暴力的な男の栄枯盛衰と、猜疑心に満ちた彼の人間関係が描かれている。
幸せな生活のシーン以外モノクロで、いつ怒りが爆発するか分からない緊張感が常にあった。最後に聖書が引用されるがあまり理解できなかった。
引き締まったボクサー体型から腹の出た中年体型まで演じたロバート・デ・ニーロの役作りはすごいと思った。太った姿は本当にロバート・デ・ニーロ本人か分からなかった。
傑作と言われる本作だが、個人的にはあまりハマらなかった。
" Go get 'em, champ. I'm da boss, I'm da boss, I'm da boss, I'm da boss, I'm da boss... "
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