くわまんG

嫌われ松子の一生のくわまんGのレビュー・感想・評価

嫌われ松子の一生(2006年製作の映画)
4.5
重くのしかかって深く突き刺さるキリストのお話。辛い。キツい。見てられない。泣けやしない。素晴らしい。

現代日本人は宗教に最も馴染みの薄い民族。自分のようにどの信義にも明るくなく、特別肩入れもしていない人が大多数です。その利点は選択肢が無限に近いこと、欠点は拠り所を失いやすいこと。勝手にそう解釈しています。

“宗教”と聞くだけで怪訝な顔。信じる前に疑う。それが危機管理だと思っている。これほど騙しやすい連中も少ないでしょう。極論ですが、詐欺に対する防御力だけについて言えば、元から何かに狂信的な人の方が余程手強い。当人の信条と一致していなければ、何を吹き込んでも右から左だからです。

“信じる”ことは個人に絶大な力をもたらします。ただし善悪は一切わきまえない。そこに恐怖を覚える。信じることを避ける。それが本作における、松子を除いた登場人物たち。松子はさしずめキリストです。

あらすじ:
2001年東京荒川。中年女性の遺体が見つかる。川尻松子さん53歳。殴打による暴行の痕跡があり、殺人事件として警察が動きだした。

見所:
中谷美紀
ジーザス松子クライストの生き様
エンディングのようなオープニング
主人公以外全員が狂言回し
ごっそりスタミナが減る後味
あまりにも辛いハッピーエンド

恐らく監督は配慮したのでしょう。なんだこれカルトかよ!と言われないよう慎重に。思いきって笑いにしたり、あえて明るくしたり、うまくくだけさせたり。タイトルからしてそうです。しかしメインテーマは勢い良くぶっ放しました。笑って泣いて劇場を去っても、得体は知れなくとも、どでかい足跡が強く残るように。

観てる間は泣けもしませんでしたが、観終わってからじわりじわり強烈に効いてくる。お元気な時にでも、是非どうぞ。