ヒルズヴァンウィンクル

抱きしめたいのヒルズヴァンウィンクルのレビュー・感想・評価

抱きしめたい(1978年製作の映画)
4.7
DVDが無かったので、探すのに苦労してやっと観れた。

この映画はビートルズの初アメリカ上陸という発端を看板の文字修正と立ち回る警官だけで認識させる冒頭から既にゼメキスの巧みな演出力を見ることができる。
ビートルズの視点ではなく、ビートルズに翻弄されるファン達からの視点による語り口により観客を彼らと同じ視点に引き込む手法は音楽映画としては奇妙である。そして、ファン視点といえども全員が全員熱狂的な支持者ではなく、反感を持ってる人も含めることによって、この若者の狂詩曲にドライな一面を持たせることに成功している。
ファンの熱狂ぶりは怖いとかの次元を超えて一種のスペクタクルと化しており、これこそ本作の醍醐味とも云えるだろう。一直線に進む道路でのカーチェイスやホテルへの潜入などは、後のゼメキス作品への布石となっていて一映画ファンとしてニヤニヤしてしまうポイント。
そして、これらの若者による狂騒はもう二度と訪れることのない”失われた時間”だということを知っている我々からしたら、少し哀愁を感じる青春コメディであるのかもしれない。