中庭

抱きしめたいの中庭のレビュー・感想・評価

抱きしめたい(1978年製作の映画)
3.6
テレビの電波の元を断とうと?して鉄塔を登る男が手斧を振りかざしたとき、暗雲の切れ目から稲妻が走り、男の危険な思惑を食いとどめて物語を軟着陸させる。もはや登場人物たる存在感でデビュー作から雷を表現したゼメキスは、以後ほとんどのフィルモグラフィに彼を意義深く画面に忍ばせることとなる。
画面越しのビートルズ本人映像と、ロングショットでとらえた代わりの役者の演技との同期に尋常でないほどの手間暇をかけており、リンゴの手首の返しに至るまで念入りな再現に執念を燃やしている。『フォレスト・ガンプ』のアメリカン・ヒストリーの演出や、件のハンフリー・ボガート「主演」の短編など、本人映像との合成というあくまでまがい物の魔力でしかない映像効果への異様なまでの執着という作家性への結実の端緒は、たしかにここに芽吹いている。
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