ルサチマ

無人列島のルサチマのレビュー・感想・評価

無人列島(1969年製作の映画)
4.4
被爆者である日出国という戦後日本の象徴としての少年が、修道女(アメリカであり、戦後民主主義の象徴)の傀儡として育てられ、『GOOD-BYE』で舞台となる韓国の人間が戦時下の日本人差別を批判する語りが記録されるという、象徴を重ねたドラマが組み立てられるが、日出国は国会議事堂の前で三島由紀夫的(石原慎太郎と異なり、体制に靡くことはない)に褌姿で刀を持ち、大文字の政治に抵抗しようと試みるもそのフロアで流れる西洋音楽につられて踊り出すという逃れ得ない円環構造の中のアメリカ的民主主義に金井勝自身が自らを位置づけようとする思考が垣間見える。そして成長した日出国が自らの子供に対して下す行為は、真の意味において日本が自立するためには、再びアメリカによって破壊されなければならぬという強烈な皮肉が提示されていることも読み取れるが、なにより面白いのはこのデビュー作で自らをどうにか戦後日本人としての自我を確立しようと試みたであろう金井が次作においては、韓国に自らのルーツを見出そうと試みることである(日本へのGOOD-BYE!)。
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