sally

アメリカン・スプレンダーのsallyのレビュー・感想・評価

アメリカン・スプレンダー(2003年製作の映画)
5.0
声にならない声で引き留めても
愛する人は去っていった
平凡で退屈な書類係の生活
ヒーローにはなれなくても
コミックの主人公にはなれた
人生は愛おしくてどこか寂しい

満たされないまま短い週末がくる
生きていれば良いこともあるのだ

バラ色の人生なんて、まるで幻想だ。

冴えない書類係が人気コミック作家になる。
まさに、アメリカン・ドリーム。

カルト・コミックである
「アメリカン・スプレンダー」の作家
ハービー・ピーカーの伝記映画。
アメコミ風のカットや、
ドキュメンタリーちっくな構成も面白い。
劇中で流れるジャズが心地良く、
レトロな色合いがとってもキュート。

恋が成就したとき、夢が叶ったとき。
その瞬間は最高に幸せを感じるけれど、
その先はもう、"日常"なのだ。
もしくは、想像とは違うかもしれない。

いつだって隣の芝生は青くて、
他人はきらきらと輝いて見える。
なぜなら、他人のことは
良い側面だけを見れるからだ。

物事をどう捉えるのか?
どんな物語として描くのか?

ファンの女性からの手紙がきっかけで
出会ってすぐに結婚するなんて、
それこそ映画のようなロマンスだ。
だけど彼はコミックにロマンスは描かない。

コミックの主人公を書く作家なのか、
コミックの主人公なのか。
それはどちらも自分で、
普通の生活がコミックになる。
スターの生活では描けない話なのだ。
人生は矛盾だらけ。
だけど、矛盾があってこそ人生。

病のような欠点が時には人を救う。
完璧な人なんて、きっと存在しない。
不完全で完成された愛すべき人たち。

誰もが夢見る"バラ色の人生"だけが幸せではない。
退屈で、失敗して、喧嘩して、寂しくなって。
それでも、
愛する人がいて、好きなことがあって、
不完全でありふれた日々が何より幸せなのだ。

小さな希望と、
ささやかな幸せに気付かせてくれた。

わたしの中で隠れた名作にランクイン。

ウディ・アレン
ミシェル・ゴンドリー
『ゴースト・ワールド』
『ルビー・スパークス』

この辺りが好きは人にはおすすめ◎
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