セッセエリボー

乾いた人生のセッセエリボーのレビュー・感想・評価

乾いた人生(1963年製作の映画)
4.4
イ!!ヌ!!!イヌが!!人外の演者がこんなに完璧に役をこなしてるのはなかなか見かけない。冒頭からずっと的確な動きしかしてないが、最期のそれはあまりに凄絶で息を呑んだ。本当に殺されちゃってるのが色々思うところもあるが、そういう倫理が何もない時代と場所で「現実の過酷さをありのままに伝える」というモチベーションのもつ残酷さが残したこのイヌの姿は末代まで脳裏に刻みつけられるだろう…。さらにそこにネズミのカットバックを入れている(しかもそれがめちゃくちゃ効果を生んでいる)ことには震え上がらざるを得ない、映画って怖い。
ネオリアリズモの定義もよく知らないし作品も殆ど見たことないのだけどひょっとしてこれが…?と思わせるような、虚構を現実以上に現実のものとするというか現実の凝集された雫を搾り出すような、超越的な立場を捨てたカメラとその前に自らの演じる肉体を晒す役者とのそれぞれ身を削る対峙が見られた特に冒頭は非常に良かった。中盤に物語が強くなると少し失速はするのだが監獄内の仰角ショットなど力強い画からは最後まで目が離せなかった、あの終わり方は『サタンタンゴ』でしか見たことない。優れた私小説とかもそうだけどリアリズムを突き詰めると形式の追求に辿り着くってあるな。一本しか見てないけどグラウベル・ローシャとコレが同列にカテゴライズされるのはなんか、違うのでは。