イチロヲ

武士道残酷物語のイチロヲのレビュー・感想・評価

武士道残酷物語(1963年製作の映画)
4.0
戦国時代から近代まで、時代別の七つのエピソードをオムニバス形式で綴っている、サスペンス・ドラマ。南條範夫の小説「被虐の系譜」を原作に取っており、ベルリン国際映画祭で金熊賞を獲得している。

「己を殺して主君に仕える」という忠義の概念により人生を狂わされた人々のドラマ。「ここが変だよ!日本の武士道」の釣瓶打ちとなっており、中村錦之助が性格の異なる中心人物を一人七役で演じている。

戦国時代では、殿が亡くなると家臣が後追いの割腹劇場を開始。江戸時代では、無垢な少年が男色家の藩主により慰み者にされる。明治期では、白痴になった元藩主のために青年が自分の許嫁を献上。現代では、社内の上下関係がプライベートに干渉してしまう。

後に石井輝男が展開させることになる「異常性愛路線」の片鱗が見え隠れしており、世代を超越した普遍性が内在されている。本作の鑑賞後に、高田渡「教訓1」を聞くと、感慨もひとしお。
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