ギズモX

ワイルド・エンジェルのギズモXのレビュー・感想・評価

ワイルド・エンジェル(1966年製作の映画)
4.8
「この映画は、高度技術社会のなかでハイスクールを脱落し、職業技術もなく、ときには読み書きさえできない人間たちの物語だった」
ロジャー・コーマン

B級映画の帝王である彼の代表作の一つで、本作の主演ピーターフォンダ代表作『イージーライダー』や『狂い咲きサンダーロード』『AKIRA』などの暴走族映画の原点であるのがこの映画。
本作の最大の特徴は、本物の暴走族集団"ヘルズエンジェルス"を実際に主役として出演させ、ありのままの彼らの姿をそのまま撮ってしまったことだ!

鉤十字がトレードマークのヤバさ全開な"ヘルズエンジェルス"は映画の中でもお構いなし。
撮影現場は殴るわ、騒ぐわ、言うこと聞かないわのアクシデントの連続だったそうで、本物の暴力が伴っていたとされるその狂乱ぶりは、あのスコセッシですらも
「映画館でワイルドエンジェルを見て大いに勉強した」
とか証言してる程!
実際にその暴力描写はあの『グッドフェローズ』などのスコセッシ作品の原点を匂わせる勢いであり、それぐらいすざましくて生々しい。
(ちなみに本作の公開後、ロジャーコーマンはヘルスエンジェルスから因縁をつけられて殺害予告を受けている)

しかしながらこの映画には
《社会からはねのけられた若者達の視点》
というのが話の根幹にあり、
乱闘騒ぎを起こした後に警官から逃げていたら問答無用で銃で撃たれてしまうシーンがあるなど、劇中でのヘルズエンジェルスは様々な大人達から除け者にされている。

そんな中での死んだ友人の葬式で、ピーターフォンダが牧師に対して、
「誰にもジャマされずに自由になりたい」
と叫ぶシーンは『イージーライダー』と同じく、束縛された世界への反抗を強く感じさせ、映画という媒体を越えて当時の若者の思いを切実に映し出している。
そして続く埋葬の場面での、仲間が去り一人になっても友人の墓を掘り続けるピーターフォンダの後ろ姿からは、この地上には彼の言う"自由"がもうないことを悟ったかのようでとてもやるせない。

この腐った世界を作り出したのは大人達だ。
なのにどうして奴らは「良い子ちゃんでいろ」と若者に押し付ける?
どこにそんなことを吐ける資格がある?

人間や体制のリアルな姿にスポットを当てたクールでアナーキーな物語は、当時の低予算映画最大級のヒットを叩き出し、後のアメリカンニューシネマへと繋がっていくこととなる。
コーマンやピーターフォンダのアウトサイダーな思いが込められてある傑作だ!

https://youtu.be/MnGzl-OEyGE
https://youtu.be/Y3ixEzKA4k0
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