イトウモ

めしのイトウモのレビュー・感想・評価

めし(1951年製作の映画)
5.0
大傑作

夫婦の話。
近所のおばさんが「夫にこき使われ、子どもにこき使われ、女が好きなことが言えるのは娘のうちだけ」とぼやく。
子どものいない夫婦の元に、夫の若い姪っ子がやってきて遊んで帰る。
夫との貧しい生活、専業主婦に疲れた妻が、この姪っ子に感化されて東京の実家に帰る。

娘から女になり、結婚し、母になり、老いていく。封建的な社会の中でレールを歩くしかない女が束の間の自由を獲得するための仕草として家出が描かれる。家出をしてなにをするのか。
実家に帰った女の寝顔を見て、母親が「女は眠るのよ。夫の顔を伺ってるだけで気疲れするの」と呟く。

彼女はなぜ猫を飼うのか。夫婦にはなぜ子どもがいないのか。彼女はなぜ駅で子どもの後頭部を見てはっとするのか。なぜ従兄弟との恋仲がほのめかされるのか。なぜ彼女は書いた手紙を捨てたのか。彼女はなぜ眠るのか

生活に疲れた女の家出には、いくつもの人生の分岐ルートがほのめかされているが、いくつものその先が描かれないまま終わる。女はただいっとき、家出をするだけ。
いつも「めし」と妻を呼びつけた夫と、久しぶりの外食が叶うと二人は家に帰る。