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めしのcのレビュー・感想・評価

めし(1951年製作の映画)
5.0
成瀬巳喜男の撮る夫婦の話、とても好きだ。妻の顔を見れば、「腹減った」「めしは?」な夫。こんな日々、美しい妻の表情はいつだって浮かないに決まっている。夫に悪気があるわけではない。ただ、やはり毎日のことだから、奥さんの不満は溜まる。
そこに飛び込んでくるのが夫の姪っ子だ。自由奔放で我儘。でも可愛いから許されると思っている。こやつが最初から最後まで最高に腹立つ!馬鹿な夫は、この姪から「わたし、初之輔さんみたいな人と結婚したーい!」と言われて、「こ、こら。おじちゃんと呼びなさい。」とどぎまぎする。本当に呆れる。。が、前述した通り、この男にはキザなところだったり下心だったりは全くなく、すべての言動に悪気はない。むしろ“汗汗”って感じで、途中からは見ていてかわいそうになってくる。なんでもっと上手くやれないのか、あんなに美人な奥さんを大切にできないのか、と。
両者の気持ちが分かり出すと、もうお願いだから離婚しないでおくれ、という気持ちで映画をみはじめる。だって、世の中、こういう微妙な感じのこと多そうじゃない。十年後くらいに控える(であろう)自らの結婚生活のためにも、ある希望を持ちたいがために、頑張って!という気持ちになりだす。

そしてその微妙なすれ違いは、微妙なことで持ち直す。これがものすごく何となく、つまり上手に描かれていて、泣けるんだなあ。奥さんは、結局、その旦那さんの悪気のなさが好きだったということなんだよね。
最後の方、ふたりでビールを飲んで、夫「美味い!」妻「苦い!」といって笑うシーンで、こちらは泣き笑い。最高。私の人生の映画になった。
あ、あと飼い猫の動きが、まるで料理における調味料みたいに、画面の中にひと味加えているのがいい。
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