ほーりー

血煙高田の馬場のほーりーのレビュー・感想・評価

血煙高田の馬場(1937年製作の映画)
4.5
忠臣蔵四十七士のひとり堀部(旧姓・中山)安兵衛が一躍名が轟くことになった"高田馬場の決闘"を描いた傑作時代劇『血煙高田の馬場』!!

阪妻の猛ダッシュシーンが有名な本作品の感想を一言で言うと、べらぼうに面白い!!。

叔父・菅野六郎左衛門(演:香川良介)のもとを飛び出した安兵衛(演:阪東妻三郎)は今では貧乏長屋に居をかまえ、酒と喧嘩に明け暮れていた。

ある日、往来で喧嘩の最中、安兵衛は叔父とばったり再会してしまい、早速、安兵衛の長屋で説教される始末。

とは言うもののこれで反省する安兵衛先生ではなく、次の日、チンピラから因縁をつけられて困っている商人を助け、御礼に酒をご馳走になりご機嫌のまま夜の町をさ迷う。

一方、叔父は剣の御前試合で負かした村上兄弟の逆恨みを買い、高田馬場にて果たし合いを受けることになった。

どんな汚い手段もいとわない村上兄弟のことである。自分の運命もこれまでかと悟った叔父は安兵衛の家へ暇乞いに赴く。

そんはことを知らない安兵衛は町でへべれけになって寝ていて……。

阪妻の個性が見事に爆発した会心作だった。

泥酔しながらも敵をバッタバッタと斬る安兵衛の怖さ。斬っては「一番星、消えた~」とニタッとする場面にゾクゾクとする。

そして何と言っても圧巻なのが無頼の道へ落ちた安兵衛が叔父の窮地を知って改心するシーン。

なかなか叔父上の手紙を読もうとしない安兵衛にやきもきする長屋の住人たちが更に効果を出している。

この長屋の住人のひとりが後の名優・志村喬。怪しげな講談師役で、「勝ってくるぞと勇ましく誓って長屋を出ていった」など聞いたことのあるような文句を交えたりとコミカルな役どころで面白かった。

そして窮状を知り高田馬場へと急行する彼を応援しようと長屋のみんなが「わっしょい!わっしょい!」と後から追いかける。この辺り、のちのジョン・フォード『静かなる男』のクライマックスと似ているのだが、興奮度合いでは圧倒的に本作の方が上だと思う。

そして舞踊のような殺陣で大勢を相手にする阪妻がメチャクチャ格好よく、彼を取り囲む野次馬たちの熱気の凄さに圧倒された。

■映画 DATA==========================
監督:マキノ正博/稲垣浩
脚本:牧陶三
音楽:高橋半
撮影:三井六三郎/石本秀雄
公開:1937年12月31日(日)
ほーりー

ほーりー