mh

野火のmhのレビュー・感想・評価

野火(1959年製作の映画)
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市川崑版をようやく見た。
極限の飢餓の描き方がすごかった。
うんこのところとか、モノクロであることも計算しているんだろうね。
飛行機が来たら死んだふり→機銃掃射→立ち上がる人数が少ないとか、タクロバンへ向かう幽鬼の群れとか、よく再現できたなと思う場面が多いんだけど、映画スタッフの中にも体験者がいたってことなんだろうな。
冒頭こそ、怒られているていで状況説明が入るんだけど、その後は、すべて画で語る。
主人公は英語や現地の言葉がしゃべれる設定で、現地人との会話には字幕もつかない。
民間人の女性を殺すけど、スカートを直すなど、そういう細部の積み重ねが素晴らしい。
人肉のくだりも流れが自然だった。
ただし芥川也寸志の大げさで先走ったBGMは苦手だった。これはほかの映画でもよく思うので、ただ単にこの音楽家が個人的に苦手というだけのことかもしれないけど。
人肉食を扱った戦争映画って、世界的に見ても稀だし、それを1959年の段階でものにしたってのがすごいことだね。
ドラマチックに味付けられた反戦色の濃い塚本晋也版よりもこっちのほうが好みでした。
面白かった!
mh

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