めしいらず

野火のめしいらずのレビュー・感想・評価

野火(1959年製作の映画)
4.2
1959年市川崑版。敗戦色が濃厚なレイテ島。米軍によって食料経路を断たれ、いよいよ窮迫していく日本兵たち。極限状況の中で露わになる人間の浅ましい本性。皆が残り僅かな食料を守ろうとする余り疑心暗鬼に駆られ、互いを監視し合う緊張感に支配されている。そして真実の飢えが、人が人である所以の倫理や尊厳を奪い去っていく。眼前で繰り広げられるおぞましい生き地獄。人であることを諦めた者だけが生き残る過酷な現実。そんな中で、野火の温もりと、その周りに集う人の生活に交じりたかった主人公の哀れ。戦争の真実に迫る名作だ。
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