滝和也

スイミング・プールの滝和也のレビュー・感想・評価

スイミング・プール(2003年製作の映画)
3.8
若く奔放なる性と
深く沈む老いたる性

だが開放されたその美しさに
変わりはない…。

「ベニスに死す」かと思いきや、
それをも内包する不穏なる
ミステリーへと転換する…

あ〜モヤモヤする(笑)

「スイミング・プール」

スランプ気味であった英国のミステリー作家サラ(シャーロット・ランプリング)は編集者ジョンの勧めで南仏にある彼の家を1人で訪れた。彼女の知的好奇心はその地に刺激され、仕事を始めるが、ジョンの娘、ジュリー(リュディヴィエーヌ・サニエ)がやってくる。若く美しい肢体を持ち、奔放な彼女に生活を乱され、衝突するのだが…。

これは賛否別れますよね。あのラストには…。好き嫌いと言ってもいい。またプロット自体が前半から後半にかけて変わってしまう気もしますし、まぁモヤモヤする。ただその両方が混濁しながらも、作品として美しく魅了されてしまうのは何故なんでしょうね(^^)

前半の印象ですが、ある意味ベニスに死すの若さへの憐憫、嫉妬、憧れを初老の女性サラと若さ溢れるジュリーと言う二人の女性を通して描いていく作品に見えていました。

そう皮肉な迄に丁寧に。

抑圧された老いたる性と若く開放された性の余りに残酷な描写。同じ官能的なカメラワークで見せる二人の水着姿…。サニエの弾けるかの如き肢体をしつこく見せ続ける官能的な美。それに対しいつもよりガードが硬いシャーロット(笑)。そして撮ってはならない初老の彼女の手。年齢は手に現れますよね。残酷と言うか意地が悪いと言うか…。

そのジュリー=サニエの若さに反発しながらも魅了され、興味を持つサラにベニスに死すみたいな印象で進んで行った訳ですが…

そして後半、若さ故に起こる殺人と言う非現実。その非現実を超えて、いやそれを理由に開放されたサラの美しさに、これぞシャーロット・ランプリングにしかできない役だ!と感銘しきりでした。(大人は理由がないと脱げないものです(笑))顔や手には、年齢を感じさせながらも、ここで抜いたか伝家の宝刀とばかりに、美貌を見せつける彼女。その美しさにそれまでは全て前ふりか!の驚きがございました(笑)

そしてあのラスト。このある種の開放、官能美と言う作品の柱は上記に書いたものであるとは思うのですが、一気にモヤモヤとプロットがミステリー的に変異します。それはそれで考えさせられ、只の官能的作品の枠を超えていく要因にもなってますよね。

やはりシャーロットは美しい。固そうな英国女性、硬質的なイメージを持つ三白眼のクールさとあの大胆なシーンでの対比。彼女ならではでしょう。愛の嵐のファンでもあるので私には尚更でした(^^)ある意味、このレビューも多分にシャーロット視点になってますね(笑)そしてサニエのフランス女性的な奔放で、若く弾ける美しさ。柔軟な不安定さすら感じる姿は正に対比された美でした。

フランス映画らしい女優さん二人の輝く美しさに、人を煙に巻くような一癖を加えたフランソワ・オゾン監督の素晴らしい作品でした(^^)


以下ネタバレ…。




あれはジュリー登場から小説なんでしょうね…。現実か幻想か、居虚実実とは正にこのこと。ラストはそうきたか〜と。デ・パルマラインですね(^^)
滝和也

滝和也