ねまる

まほろ駅前多田便利軒のねまるのレビュー・感想・評価

まほろ駅前多田便利軒(2011年製作の映画)
4.0
瑛太と松田龍平の組み合わせって、
日本映画界の宝物のひとつで、
それぞれ単一個人として好きな俳優さんなんだけど、プライベートでも仲が良いことを含めて、組み合わせとしてさらに好きだなと思わせてくれる。

互いを信頼して演技をしているのは勿論、
表現者としての違いのバランスが面白い。
瑛太は、正統派努力系演技力で、感情が生で伝わる台詞や表情に見入る。
龍平は、天才派変則系表現力で、全身でオーラさえ操る独特さ。
別の人と組むと違うこともあるけど(瑛太が龍平のタイプに寄るイメージ)

そして、この組み合わせを存分に味わえるのがまほろシリーズ。

瑛太はさ、龍平の天才さを勿論知っていて、褒めるけど、この作品は瑛太の演技に惚れ惚れだったよ。
龍平はキャラ作りも無感情のなかに感情を込めるのも完璧で、誰が相手でも飲み込める最強のパワーの持ち主で、その作品の印象が龍平で覆われてしまうこともあるほどの魔術師。
行天のヒーローらしさも、猫らしさも、あの雰囲気の中に閉じ込めるのはそれは魔術師しか出来ないものを相手にして、
多田の自責の念の暗さや、渋い生き方の上のかっこよさを、真面目さで括るの天才かと思った。
1人語りの、噛んだとこ含めて、まるまるベストシーン。

作品のテーマや流れも、
最初のゆるい始まりから、最後にかけて畳み掛けるように全てのものが繋がって、色んな感情やセリフの意味が飛び込んできて、
とってもとっても好きだった。

三浦しをんさんの原作もとても素敵なんだろうなぁ!!

主演2人だけでなく
麿赤兒、大森南朋の監督家族チームや、
柄本佑、高良健吾あたりのキャスティング合わせ、
もちろん2人の共演作としても価値があるんだけど、それ以上に1つの作品として、一度自らの幸せから離れた男がもう一度前を向く姿を描いた良作だなと思いました。



メモ(ネタバレ)
・チワワのはなちゃん
捨てられた犬が、拾われた女性たちのもとで愛されて暮らす。
「犬は必要とする人に飼われるのが1番幸せ」「誰かにとって必要とされるってことは、誰かの希望になるってこと」
行天は誰かに必要とされたい
・親に愛されないゆらぼう
自分は愛されなくても、誰かを愛することは出来る。
親のいないネロは幸せ。
フランダースの犬はハッピーエンドだが、ラストを観て泣く2人。
・行天の過去
子供が欲しい同性愛者の女性のために、精子を提供し、離婚する。
行天は愛することは出来るなんて言えない。自分も愛されて育っていないから。
・多田の過去
血の繋がっていないかもしれない子を愛し、そして亡くした。
誰かを助けることが罪滅ぼし。だから便利屋をやっている。
・多田にとっての行天
傷つけた小指を思い出す。自分の後悔を思い出させる相手。過去の象徴。愛して裏切られた相手にも繋がる?信じて裏切られるのが怖い?
過去と向き合うのではなく、(口では)今の行いで罪滅ぼしをしようとし、行天を遠ざける。
過去を受け入れること、誰かを受け入れることを決め、行天を連れて帰る。
・行天にとっての多田
自分を必要としてくれた人。チワワに例えるなら、自分を希望としてくれた人。
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