かきぴー

ブギーナイツのかきぴーのレビュー・感想・評価

ブギーナイツ(1997年製作の映画)
3.6
きちっとした三幕構成(時間配分は異なりますが)に落とし込んだ、わかりやすい「ドン底から這い上がる話」。クロスカットによって、各キャラクターの直面している状況を結んで、群像劇的な感動が味わえる、爽快な映画。

世間からバカにされている「映画」を肯定するメインモチーフは、ポールトーマスアンダーソンの自己肯定に見えてしまい、若干乗れなかった。

第一幕は、「世間からバカにされてる俺たちの上昇」。自分的にはこの幕が一番退屈だった。ずーっと音楽がかかって元気な画が続くが、それがメリハリなく永遠と続いてくような断片的エピソードを目的のために繋いだ感が否めない。テンションは高いが単調。まぁ、この幕は「フリ」なのでそこまで気にすることはないかもしれない。

第二幕は、第一幕の最後のあのエピソードが転換点となって始まる、いわゆる「ドン底フェーズ」。これはかなり好きだった、というかポールトーマスアンダーソンはこれがやりたかったんじゃねえかとさえ思う。あの、名優が、あの俳優が、泥みたいなことをやらされている。そして、トドメとして暴力描写も適切に使われていて、儚さを感じて打ちひしがれる。それらをクロスカットでつなぐあたりは、お得意なやつ。

第三幕は、死ぬかもしれない状況を受け入れとても長いタメの後に生きる方向に行動するエディから始まる(と私は思っている)。そこから、もう一度彼らは手を組み上っていく…。まぁ、悪くはない。

ここからは、私が乗れなかった点。長回しや音楽かけまくりでノリノリで観れるのだが、長い上に単調なのが個人的マイナス。それから、エピソードの組み方が「こういうことの説明のためのエピソードですよ」という狙いがスケスケで少し冷静に観てしまった自分もいた。というのも、この話は「映画を撮る映画」ということで二重評価構造に必然的になってしまっているので、直感的に観れないのでのめり込みずらい。「いい演技ができてる らしい」、「自身最高傑作の出来 らしい」という状態になってしまうので、私としてはテンションが上がり切らなかった部分があった。それに付随するように、他のエピソードも魅力的でスマートなものがなく、説明的に見えてしまったのも自分的にはマイナス。

決して悪い作品ではないのだが、雑な点が気になる上に、「それでもここは良かった」という武器はあまり感じられなかった。
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