Fitzcarraldo

悲しい色やねんのFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

悲しい色やねん(1988年製作の映画)
3.3
『悲しい色やねん』という題名も決めうちで映画化前提の原作小説の依頼をされた小林信彦が、1987年に発表した短編を森田芳光が脚色して監督した作品。

原作小説は未読だが、メインは語り手である作家と若手落語家で、ヤクザは間接的にしか出てこないそうな…

小説の語り手は映像には向いてないにしても、若手落語家までも映像化の際に消されてしまうとは…もはや原作小説なんて、ただのお飾り扱い。小説家が持っている箔をつけたかっただけのように感じる。

そこまで変えるなら原作いらないでしょ…

黒澤満のセントラルアーツの下でも森田芳光の色は出ていると思う。ほぼほぼ、あぶない刑事になりそうなところを不穏な音楽に合わせて細かくカットをつないだり、全体の色彩トーンを紫色にしたり、殴ったら口から気持ち悪い液体を吐き出したり、銃で撃たれて血が吹き出るときの血の色が下痢みたいな汚かったり…

あと走ってるクルマのシーンでの撮影方法がワカラナイのかある。運転者は仲村トオル。これを助手席の外側から撮影しているのだが、カメラはそこから、ゆっくり動きフロントへ回りボンネットの上を通過して、運転席側へ。これを車も走りながらどうやって撮っているのか…

変に影が出ているので、ルーフからクレーン?
ルーフから棒にカメラを吊ってるのか?
こういう変なこだわりをひとつでも入れてくるのは素晴らしいね。物語としては、そこでカメラを回す理由が何もないのに…ってところがね。FIXでも問題ないのに、敢えてやってる感じが好き。

それにしても仲村トオルくんは相変わらず芝居が下手だね…腫れぼったい目と、乏しい表情…怒鳴るだけで声を張ることしかできない起伏のない声音。まだまだビー・バップ・ハイスクールのヤンキー癖が抜けないか…あぶない刑事のイジられ役のトオルとビーバップのトオルを混ぜれば、もう少し良さそうなもんだけど…

小学の低学年の頃は『あぶない刑事』と『ビー・バップ・ハイスクール』が大好きでね…どっちも黒澤満のセントラルアーツだし、仲村トオルだし…子供の頃は仲村トオル大好きだったのになぁ。久しぶりに改めて見るとホントに下手…こんな下手だとは子供の自分には分からなかった。ずっと見てきたし免疫があるはずなのに…

「こんなパンチでよく極道やってこれたな?」
という仲村トオル演じる夕張トオルの台詞があるけど、

「こんな芝居でよく役者やってこれたな?」
と言いたい。

しかも関西弁が…ヒドイ!
それなら東京の設定にするか、関西の役者使ってよ。一応トオルくんは東京生まれだけど、0~3歳を大阪で過ごしたようだからネイティブ関西弁を
使えそうなもんだけど…長く使わないと難しいかね。歌がうまくないから音を捉えるのが苦手なのかな。

まぁそれでも…育ての親みたいなもんだからね、好きなんだけど。

そして、なんと言っても御殿山ミキというフザケた名前のキャラを演じる石田ゆり子の美しさ!
この時18歳なのだが…今と何ら変わらない!18歳という若い時の美しさとかではなく、現在に至るまで何ら変わらない魅力を放ち続けていることに驚く。これはオードリー・ヘップバーン級じゃないか!

石田ゆり子の下手クソな関西弁も愛嬌愛嬌…

ディーラー役でルーレットを回している森尾由美の「そ・れ・ま・でーー!」の甲高い声が…毎回うるさい…キレイなんだけど。

同名主題歌を歌う上田正樹も、ちゃっかり出演している。

そしてなんと言ってもオレの大好きな俳優である加藤善博サンが浪花銀行の支店長の腰巾着役で登場。顔も声もいいし、支店長に相手にされてない役回りも最高!もう少し出番あげてー!

屋上での藤谷美和子のラスト…あれは何?金箔?撃たれた演出は漫画のよう…

そして、紫色に染まるコンクリートにポツンと立つトオル…ここに『悲しい色やねん』のイントロが重なる。ふぅ〜画としてはカッコイイ!んだけどね…トオルの顔面アップで泪が垂れてEND!!

いや話めちゃめちゃだけど…
まっいいか細かいことは。
いい歌だから…


追記…
高嶋政宏が語る。

「江波杏子さん、小林薫さん、僕は新人だけど皆さんプランあるわけじゃないですか?!自分で作ってきた…それやると、永久にOKでないんですよ!とにかく監督の言った通りに僕は新人訳わかんないからやってたら、どんどんOKでるんですよ!他の人たち全然OK出ないんですよ!…終わる間際かな…森田監督から、"高嶋!オマエはな、監督を喜ばせることだけを考えとけばいいんだ…それが俳優なんだ!"って言われて、その時に、俳優ってこんな面白いんだっていう新たな感動が…」

ーTV『石橋、薪を焚べる』より
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