柏エシディシ

泳ぐひとの柏エシディシのレビュー・感想・評価

泳ぐひと(1968年製作の映画)
3.0
ふっしぎな映画。おもしろい。何がなんだかわからないまま主人公の歩み(この場合泳ぎ?)に付き添っているうちに、人物のそして世界の虚飾が1枚1枚薄皮を剥いでいくように露わにしていき、観客も目を逸らしたくなる様な真実を最後には突きつけてくる。
監督フランクペリーに対する町山さん評「ほんとうのことを描き過ぎて、みんなをイヤにさせちゃって映画が撮りづらくなった人」には納得w
さらに監督ノンクレジットでシドニーポラック!こんなんも撮ってるんだなぁ。と、あらためてフィルモグラフィーを見返してみたんだけれど、割と幅広いというか一括りに出来ない作風でしたな。
終わってみれば、なるほど社会風刺的なポラックの側面が出てる意欲作。

「知ってるつもりでいつも驚かされる」という意味合いでは名優バート・ランカスターも然り。この人も正統派ハリウッドスター的な側面もありつつ、ヨーロッパ映画で活躍してたり、こういうメッセージの高い出演作が多数あったり、面白い人。オスカー受賞作の「エルマーガントリー」を筆頭に、シ ンプルな様で実は複雑な内面を抱えているキャラクターを得意としていて、本作の主人公はまさにそう。

ドラマ「MAD MEN」ともリンクした時代背景や、撮影方法によるストーリーテリング、子供との邂逅の解釈など、町山さん解説で更に面白くなった。

ロダンの彫刻の様に、閉ざされたドアにもたれかかる男の背中を見ながら、それなりに齢を重ねた自分も、気をつけねばと思いつつ、人生儘ならぬものよのうとしみじみ思ったりしたり。
柏エシディシ

柏エシディシ