イチロヲ

イレイザーヘッドのイチロヲのレビュー・感想・評価

イレイザーヘッド(1976年製作の映画)
4.0
恋人とのあいだに子供を授かった青年が、奇形の赤ん坊を目の当たりにしながら、精神異常へと落とし込まれていく。デヴィッド・リンチが4年の歳月をかけて完成させた、長編デビュー作。

「父親としての自分」を受け入れられずにいる青年の、フワフワとした朦朧状態を描いている作品(たぶん、デヴィッド・リンチ本人の実体験)。「現実の直面」と「虚構への逃避」を、モノクロームのトリップ映像で表現している。

まるで、人間が一生のうちに感じる「不安感」だけを切り取ったような悪夢的世界。始めは気持ちの悪さを如実に感じるのだが、徐々に「気持ちの良い気持ち悪さ」へと変質していき、「悪夢から覚めるのがつらくなる」という倒錯状態に陥る。

アメリカにおける深夜興行創世記の立役者となった本作。「深夜の映画館」という異空間に集う、当時の人々の心境を何となく察することができる。初公開当時、ドラッギーな短編アニメ「アスパラガス」と同時上映されたというところも、ドエライ話。
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