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イレイザーヘッドのKKMXのレビュー・感想・評価

イレイザーヘッド(1976年製作の映画)
4.8
 キてるキてる。頭が狂ってますねぇ!

 徹頭徹尾イカれた映画だと思いました。精神病を発病せずにギリギリ踏みとどまっているサイコジーニアスのエッセンスが濃度200%詰まった、リンチそのものといった雰囲気の作品ですね。本当にイッてます!

 『マルホランド・ドライブ』でも感じたのですが、本作もギャグがめちゃくちゃ冴えているんですよね。リンチ流キ印ユーモアが個人的にとにかくツボで、全編ニヤニヤしながら観ました。
 オープニングのヘンリーの口から根本敬が描くような精子がニュル〜ンと飛び出したり(背景が宇宙っぽいのも意味不明で最高)、嫁一家が全員狂ってたりとキャッチーなところから、ヘンリーの顔芸までとにかく笑えました。BGMが不安を煽るような不気味さがあって、それがまたギャグに思えるんですよね。タメ演出の多用も含めて、とにかくやりすぎ感が可笑しくてしょうがなかった。ホントなんなんだ!
 他の観客がシーンと観ていたため、ゲラゲラ笑えなかったのですが、小声でブツブツとツッコミを入れながらニタニタ鑑賞しました。

 中盤の訳わかんない展開も最高としか言えませんね。突然出てくる、何あの地獄のマリリン・モンローみたいなヤツ。よくあんなの思いつくな。その後に頭がフッ飛んで、本当にイレイザーヘッドになったり、もう死ぬかと思いました。何が合格だよ!あの展開は好きすぎる。

 そしてあの超キモい嬰児がヤバヤバで、ほんとモノクロで助かりました。あれがカラーだったらグロすぎて観てらんないですよ。wikiを読んだら、どうやって動かしているか、リンチは絶対にネタばらししないため、現在でも謎とのこと。これも絶対リンチは面白がってるよなぁ。
 あと、意外とヘンリーの部屋もうっすらキモいですね。ベッド横に、盛り土の上に枯れ木を刺したような絶望的なオブジェがあったり、どこを見てもブラックな笑いがハンパないです。


 本作はリンチが若くして望まぬ父親になり、その恐怖を描いたものらしいです。
 それでもヘンリーはなんだかんだと子育て頑張ってましたね。キモベイビーが病気になった時に蒸気を当てたり、意外とイクメンなヘンリー。でも頑張りきれない。そう考えると、虐待する親に見られる一種のパターンが描かれているように感じました。子どもがあんな風に見えてしまい、頑張るものの愛すに愛せず、最終的に…みたいなプロセスを辿って虐待する親も多そうです。


 しかしまぁ、よくこんなキてる映画を5年もかけて撮りましたねぇ。病的な執念がないと難しいでしょうし、発病しないように踏ん張るには映画を作り続ける必要があったのかも。

 とにかくリンチ最高です。今の所どれ観てもスーパー面白いです。リンチスゲー
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