アキラナウェイ

キングダム見えざる敵のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

キングダム見えざる敵(2007年製作の映画)
4.3
ピーター・バーグ監督と言えば…
実話、そして主演はマーク・ウォールバーグ!だよねと思いきや、こちらは実話でもないし、マーク・ウォールバーグは出てこない。それでもピーター・バーグのエッジの効いたリアルな描写が印象的。

アバンタイトルから素晴らしい!
サウジとアメリカの石油を巡る両国間の関係性と歴史を振り返る演出がカッコいいし、惹き込まれる!

いや正直、何故テロは起きるのかという命題を当事者でない我々をわかった気分にさせてくれた上で物語が始まる。これには痺れた。

サウジアラビアの首都リヤドで警官を装ったテログループが外国人居住区を襲撃、自爆テロを起こし100人以上の市民を虐殺した。FBI捜査官が犠牲になった事で、フルーリー(ジェイミー・フォックス)ら4人のFBI捜査官が秘密裏にサウジへ入国。期限は5日。テロ事件の首謀者の捜査に乗り出す。

個人的にはキャストが豪華!
先日鑑賞した「ゲーム・ナイト」のカイル・チャンドラーがちょっと顔出し。主要キャストFBI4人組は、「ホワイトハウス・ダウン」「ベイビー・ドライバー」のジェイミー・フォックス、「デアデビル」「エレクトラ」のジェニファー・ガーナー、ベテラン俳優クリス・クーパー、そしてこれまた「ゲーム・ナイト」のジェイソン・ベイトマン!

コメディの印象が強いジェイソン・ベイトマンが実戦経験少な目の情報分析官を好演。サウジの人には通じないジョークで空回りしている様子が微笑ましい。

彼らがサウジ入りしても実権はサウジ警察が握っている為、思うように捜査が進まず少しまったりする展開はあるものの、全体的に緊張感は途切れず、テロ組織との攻防は手に汗握る!狭い市街戦でもロケットランチャーぶっ放されるわ、手榴弾放り投げられるわ、生きた心地がしない!

そして、流石ピーター・バーグ…と唸らせたポイントが2つ。

1つは、合間にイスラム教徒の日常を描いている事。
それは、サウジアラビア人やイスラム教徒の全てが悪い訳ではない事に気付かされる。彼らにも家族があって、日常がある。時間になればアラーに祈りを捧げる。彼らが祈り求めるものは「平和」である筈だ。仮にそれが自分の家族達だけの平和だったとしても。悪いのはその中の一部の人間であって、国家や民族や宗教が絶対悪ではない。

アメリカ人だけを描くのではなく、サウジアラビア人側も描いていた事は、フェアだと感じた。

そしてもう1つのポイントは、ラストの台詞。
巧妙に同じタイミングでアメリカ側とサウジ側の思いを語らせるラストシーン。これには背筋が凍りつく。

正義も悪もない泥仕合。
それがテロリズムなのだと息を飲む。
監督よ、こんな所までフェアに描き切っている。

大真面目にレビューしといて最後に何ですが、1日おきの忘年会のお陰でレビューが滞りそう!やばい!